2008年 12月 04日
あふりかの風 |
〈平和学〉その⑥ おおえまさのり
ケニヤ最大のスラムの駆け込み寺で活躍する早川千晶さん、同じくケニヤ在住のパーカッショニスト大西匡哉さん、沖縄在住のカリンバ奏者近藤ひろみさん、そしてケニヤのマテラ・マサイ長老による、第4回目になる「あふりかの風」が9月30日、妹尾美佐さんたちの主宰するムガンガ・アフリカによって、小淵沢で開かれた。
熱いいのちのメッセージとパワーがアフリカの大地から溢れ出してくるかのようだった。
☯早川千晶です。ケニヤに住んで20年になります。東アフリカ最大のキベラスラムで、駆け込み寺をやっています。親を失った子どもや貧困のために売られてぼろぼろになって傷ついた子どもたちが、走って逃げ込んでくる場所になっています。
20年前、世界放浪の旅の末に、ケニヤにたどり着きました。近藤ひろみさんの演奏のバックに流れていた映像で見ていただいたように、いのちの輝きに満ちたアフリカの土地と人々のとりこになって、アフリカに住むようになりました。
いつも胸の奥に空洞が空いているような感じで、生きていることの意味、生きるということは何なのか、本当の豊かさとは何なのかを知りたくて、旅に出ました。
そんな旅の中でアフリカに出会いました。
ケニヤのナイロビで、お爺ちゃん画家の水野先生に出会いました。内戦のナイロビの地下に籠っていのちの輝
きを描きつづけられた画家です。ナイロビで亡くなられました。
水野先生は「この世の中は光と陰に満ちている。本当に美しいものは何か、それを追求しゆくのが生きるということです。それを知りたかったら、この世で最も醜いものを見なければならない。あなたはこれから最も美しいものを追求してゆく人生の芸術家になりなさい」と言われました。わたしが20歳のときでした。
わたしがやっているのは、100万人もの大きなスラムの奥でやっている寺子屋です。
実の家族に数百円で売られた子どもたちがいたり、たこつぼトイレの穴の中に赤ちゃんを産み落とすお母さんがいたりするスラムです。生まれてくる子どもを愛する気持ちはみんな同じだと思います。
でも、そのトイレの、肥溜めの中から赤ちゃんを救い出してくる若者もいます。
あるときは、身よりのない貧しい貧しいお婆ちゃんが「宝物を拾った、宝物を拾った」と言いながらやって来ました。それは拾われた赤ん坊でした。その子は今5歳で、そのお婆ちゃんのそばで遊んでいます。
そんな光と陰を見ながら、生きることは何だろうと今も考えつづけています。
そんなスラムの中で、昨年の12月30日、大きな戦いが起きました。一瞬の内に、大人たちの間に狂気が広がって、ケニヤ全土を覆う大暴動が起きました。
何がきっかけで起きたかというと、大統領選挙です。一部の人にのみ富が集中して、大部分の人が貧しい暮らしをしています。ケニヤで起こっていることは世界の縮図ではないかと思うことがあります。ケニヤの人々は、これ以上がまんできない気持ちを、正当な選挙によって変えたいと思いました。みんなで投票に行ったのですが、大きな選挙の不正で、民衆の星といわれた野党のリーダーが敗北して、富の集中している元の大統領の当選発表と同時に、怒りが広がって、火の手が上がってゆきました。その民衆に向かって警察と軍隊が発砲して、多くの人がいのちを失いました。そして底辺の民衆を抑え込もうとして、スラムを軍隊が包囲して、閉じ込められたお母さんや子どもたちが飢えて、教会に逃げ込んだ人たちがいましたが、教会ごと焼き殺されてしまいました。
でも、銃声の鳴り響いているスラムの中に入っていって、子どもたちを一人ひとり救い出してきてくれる若者もいました。
きょう来て頂いたマテラ・マサイ長老は「その子どもたちを自分たちのミリティーニ村に連れておいで、その子どもたちは村に来て、安心して生きられる場所を取り戻せばいい。親を失った子どもたちにはたくさんの親たちがいるよ。わたしたちの村は貧しいけれど、みんなで分け合ってやっていけばなんとかなるよ。だって子どもたちというのは、わたしたちの宝物なんだから。」そんな風に言ってくれたんです。
マテラ長老の村は500キロ離れたところなんです。
ある程度の平和が戻ってきた頃に、どうしたらいいのかと考えていたときに、マテラ長老は言いました。「ここに起きていることは、世界に起きていることの縮図だよ。今、世界には、とてもとても愛が必要だよ。それを伝えに日本に行こうよ」と言ってくれました。
☯マテラ・マサイといいます。
ドゥルマ民族の出です。ケニヤからやって来ました。
わたしは自分のことを大金持ちだと思っているんですよ。心の中にたくさんの宝物を持っている大金持ちです。
人が大好きなんです。自分が好きだと相手の人も好きになってくれるんです。
人と共に生きるということでとても大切なことは何でしょう。人間は人間を支配するものではありません。何者も、何者からも支配されるべきではありません。
小さな子どもたちからお爺ちゃん、お婆ちゃんまで、すべての魂としては平等なんです。
その平等の、すべての魂を愛するということで、自分も愛されるんです。それが人々と共に生きるということだと思います。
人間には神さまから与えられているものが三つあります。知恵(頭)と目と心です。
これは人間の魂の中にあります。ですからこの三つのことをとても気をつけなければなりません。よりよく生きてゆきたい場合、この三つをうまく使うことができるんですよ。頭と目と心の作用をよく理解することです。
頭はよく先走りします。頭で考えるときに、心がついてこなければ駄目です。それらが一緒に調和したときに、前に進んでゆくことができます。
それを推し進めるために目(イメージ)を使います。
頭が先走りした場合、心が置き去りにされ、そして心を売り飛ばしてしまうということが起こります。
それと同じように、心が先走りしてしまうことも危険なのです。
たとえばわたしは、8月に日本に行くと心が決めていたのですが、お金もなにもない。そこで目でイメージするんです。日本に行っている自分をイメージするのです。そこで頭が計算をはじめてしまったら、お金がないなどと心配がはじまってしまいます。
そうではなく、心で思ったことを目でイメージして、できると信じて、頭と心を同じラインに置くと、こうやって日本に来ることができました。
わたしたちの世界には、本当の意味での平和が必要です。わたしたちは本当に平和に生きたいです。
本当に平和な世界が欲しかったら、まず何ができるでしょうか。それはまず、自分の心の中からはじめることができます。そこが大事です。
本当に平和が欲しかったら、自分の心を開いて、見つめて下さい。そして自分のことを愛して下さい。
自分の心からはじめるのです。周りのだれかを、そして自分の子どもを、隣人を愛して下さい。そんな風にして、世界は一つの大きな家族になることができます。
今日この場でみなさんと共に感じ合いたいことは、三つのことです。
アマニ、平和、ウモジャ、調和(共に生きてゆくこと)、そしてウペンド、愛です。
この三つが、わたしたちの世界をもっと幸せな場所にしてゆくために、世界をビッグファミリーにしてゆくために必要なことです。
子どもたちに愛を伝えるためにできることがあります。
自分の親やお爺ちゃんやお婆ちゃん、そのまたお爺ちゃんやお婆ちゃんのルーツについて話をして欲しいんです。そうやって人間はつながり合っているんです。本来なら人間というのはみんながビッグファミリーなんです。
わたしたちの音楽は、神さまと、ルーツ(ご先祖さま)とつながり合うための音楽です。精霊たちを呼び出す音楽です。
ここでは全員参加でお願いします。全員参加でこそ、精霊たちを呼び出すことができます。
まずは心を開いて下さい。そして中に詰まっているものを吐き出して下さい。そしてつながり合いましょう。そこからはじまります。
◉そしてマテラ長老と大西匡哉さんによるパーカッションがはじまった。やがてわたしたち一人ひとりの心が開かれて、一つの輪につながり合っていった。
自分のルーツとつながること――人類のルーツの原初に立ち返り、そこから再出発するところにこそ、わたしたちの未来はあるように思われた。
ケニヤ最大のスラムの駆け込み寺で活躍する早川千晶さん、同じくケニヤ在住のパーカッショニスト大西匡哉さん、沖縄在住のカリンバ奏者近藤ひろみさん、そしてケニヤのマテラ・マサイ長老による、第4回目になる「あふりかの風」が9月30日、妹尾美佐さんたちの主宰するムガンガ・アフリカによって、小淵沢で開かれた。
熱いいのちのメッセージとパワーがアフリカの大地から溢れ出してくるかのようだった。
☯早川千晶です。ケニヤに住んで20年になります。東アフリカ最大のキベラスラムで、駆け込み寺をやっています。親を失った子どもや貧困のために売られてぼろぼろになって傷ついた子どもたちが、走って逃げ込んでくる場所になっています。
20年前、世界放浪の旅の末に、ケニヤにたどり着きました。近藤ひろみさんの演奏のバックに流れていた映像で見ていただいたように、いのちの輝きに満ちたアフリカの土地と人々のとりこになって、アフリカに住むようになりました。
いつも胸の奥に空洞が空いているような感じで、生きていることの意味、生きるということは何なのか、本当の豊かさとは何なのかを知りたくて、旅に出ました。
そんな旅の中でアフリカに出会いました。
ケニヤのナイロビで、お爺ちゃん画家の水野先生に出会いました。内戦のナイロビの地下に籠っていのちの輝
きを描きつづけられた画家です。ナイロビで亡くなられました。
水野先生は「この世の中は光と陰に満ちている。本当に美しいものは何か、それを追求しゆくのが生きるということです。それを知りたかったら、この世で最も醜いものを見なければならない。あなたはこれから最も美しいものを追求してゆく人生の芸術家になりなさい」と言われました。わたしが20歳のときでした。
わたしがやっているのは、100万人もの大きなスラムの奥でやっている寺子屋です。
実の家族に数百円で売られた子どもたちがいたり、たこつぼトイレの穴の中に赤ちゃんを産み落とすお母さんがいたりするスラムです。生まれてくる子どもを愛する気持ちはみんな同じだと思います。
でも、そのトイレの、肥溜めの中から赤ちゃんを救い出してくる若者もいます。
あるときは、身よりのない貧しい貧しいお婆ちゃんが「宝物を拾った、宝物を拾った」と言いながらやって来ました。それは拾われた赤ん坊でした。その子は今5歳で、そのお婆ちゃんのそばで遊んでいます。
そんな光と陰を見ながら、生きることは何だろうと今も考えつづけています。
そんなスラムの中で、昨年の12月30日、大きな戦いが起きました。一瞬の内に、大人たちの間に狂気が広がって、ケニヤ全土を覆う大暴動が起きました。
何がきっかけで起きたかというと、大統領選挙です。一部の人にのみ富が集中して、大部分の人が貧しい暮らしをしています。ケニヤで起こっていることは世界の縮図ではないかと思うことがあります。ケニヤの人々は、これ以上がまんできない気持ちを、正当な選挙によって変えたいと思いました。みんなで投票に行ったのですが、大きな選挙の不正で、民衆の星といわれた野党のリーダーが敗北して、富の集中している元の大統領の当選発表と同時に、怒りが広がって、火の手が上がってゆきました。その民衆に向かって警察と軍隊が発砲して、多くの人がいのちを失いました。そして底辺の民衆を抑え込もうとして、スラムを軍隊が包囲して、閉じ込められたお母さんや子どもたちが飢えて、教会に逃げ込んだ人たちがいましたが、教会ごと焼き殺されてしまいました。
でも、銃声の鳴り響いているスラムの中に入っていって、子どもたちを一人ひとり救い出してきてくれる若者もいました。
きょう来て頂いたマテラ・マサイ長老は「その子どもたちを自分たちのミリティーニ村に連れておいで、その子どもたちは村に来て、安心して生きられる場所を取り戻せばいい。親を失った子どもたちにはたくさんの親たちがいるよ。わたしたちの村は貧しいけれど、みんなで分け合ってやっていけばなんとかなるよ。だって子どもたちというのは、わたしたちの宝物なんだから。」そんな風に言ってくれたんです。
マテラ長老の村は500キロ離れたところなんです。
ある程度の平和が戻ってきた頃に、どうしたらいいのかと考えていたときに、マテラ長老は言いました。「ここに起きていることは、世界に起きていることの縮図だよ。今、世界には、とてもとても愛が必要だよ。それを伝えに日本に行こうよ」と言ってくれました。
☯マテラ・マサイといいます。
ドゥルマ民族の出です。ケニヤからやって来ました。
わたしは自分のことを大金持ちだと思っているんですよ。心の中にたくさんの宝物を持っている大金持ちです。
人が大好きなんです。自分が好きだと相手の人も好きになってくれるんです。
人と共に生きるということでとても大切なことは何でしょう。人間は人間を支配するものではありません。何者も、何者からも支配されるべきではありません。
小さな子どもたちからお爺ちゃん、お婆ちゃんまで、すべての魂としては平等なんです。
その平等の、すべての魂を愛するということで、自分も愛されるんです。それが人々と共に生きるということだと思います。
人間には神さまから与えられているものが三つあります。知恵(頭)と目と心です。
これは人間の魂の中にあります。ですからこの三つのことをとても気をつけなければなりません。よりよく生きてゆきたい場合、この三つをうまく使うことができるんですよ。頭と目と心の作用をよく理解することです。
頭はよく先走りします。頭で考えるときに、心がついてこなければ駄目です。それらが一緒に調和したときに、前に進んでゆくことができます。
それを推し進めるために目(イメージ)を使います。
頭が先走りした場合、心が置き去りにされ、そして心を売り飛ばしてしまうということが起こります。
それと同じように、心が先走りしてしまうことも危険なのです。
たとえばわたしは、8月に日本に行くと心が決めていたのですが、お金もなにもない。そこで目でイメージするんです。日本に行っている自分をイメージするのです。そこで頭が計算をはじめてしまったら、お金がないなどと心配がはじまってしまいます。
そうではなく、心で思ったことを目でイメージして、できると信じて、頭と心を同じラインに置くと、こうやって日本に来ることができました。
わたしたちの世界には、本当の意味での平和が必要です。わたしたちは本当に平和に生きたいです。
本当に平和な世界が欲しかったら、まず何ができるでしょうか。それはまず、自分の心の中からはじめることができます。そこが大事です。
本当に平和が欲しかったら、自分の心を開いて、見つめて下さい。そして自分のことを愛して下さい。
自分の心からはじめるのです。周りのだれかを、そして自分の子どもを、隣人を愛して下さい。そんな風にして、世界は一つの大きな家族になることができます。
今日この場でみなさんと共に感じ合いたいことは、三つのことです。
アマニ、平和、ウモジャ、調和(共に生きてゆくこと)、そしてウペンド、愛です。
この三つが、わたしたちの世界をもっと幸せな場所にしてゆくために、世界をビッグファミリーにしてゆくために必要なことです。
子どもたちに愛を伝えるためにできることがあります。
自分の親やお爺ちゃんやお婆ちゃん、そのまたお爺ちゃんやお婆ちゃんのルーツについて話をして欲しいんです。そうやって人間はつながり合っているんです。本来なら人間というのはみんながビッグファミリーなんです。
わたしたちの音楽は、神さまと、ルーツ(ご先祖さま)とつながり合うための音楽です。精霊たちを呼び出す音楽です。
ここでは全員参加でお願いします。全員参加でこそ、精霊たちを呼び出すことができます。
まずは心を開いて下さい。そして中に詰まっているものを吐き出して下さい。そしてつながり合いましょう。そこからはじまります。
◉そしてマテラ長老と大西匡哉さんによるパーカッションがはじまった。やがてわたしたち一人ひとりの心が開かれて、一つの輪につながり合っていった。
自分のルーツとつながること――人類のルーツの原初に立ち返り、そこから再出発するところにこそ、わたしたちの未来はあるように思われた。
by halunet
| 2008-12-04 19:31
| スピリチュアリティと平和