2010年 06月 15日
パワー・ポリティクスからヒューマン・ポリティクスへの転換は、この「二重基準」の閉塞から自らを解き放つ |
みなさまへ(転送歓迎) 松元@さっぽろ
1、イスラエルの核問題、ようやく国際社会のまな板に
「核廃絶」をとなえるオバマ大統領の肝いりで再開されたNPT再検討会議で噴出したイスラエルの核問題が、19年ぶりにIAEA理事会で協議されている。「イランの脅威」を叫ぶイスラエルの足元に火がついた格好だ。
日本のメディアでは、「イラン制裁」に焦点があてられイスラエル核問題は意図的に隠蔽されているようだが、NPT最終文書には「中東非核地帯構想にかんする2012年の国際会議」が予定され、事実上の核兵器保有国であるイスラエルの参加を求めるにいたった。
無論イスラエルはただちに、最終文書は「深刻な欠陥がある」と非難し「NPTに加盟していないイスラエルが決定に従う義務はない」と、2012年の国際会議への不参加を表明した。しかしイスラエルの核問題は、今月のIAEA(国際原子力機関)理事会で議題に取り上げられ9月には最終報告がなされるようだ。
イスラエルの核開発計画は、建国まもなく始められフランス、西ドイツ、南ア、そして米国の秘密裡の後ろ盾で1960年代後半から70年代には取得達成し、現在はその「あいまい政策」にもかかわらず、200〜500発の核弾頭を保有しているとみられている。
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/john_steinbach.html
2、あらたに暴露された証拠文書
NPT再検討会議の最中、先月24日、英ガーディアン紙に「イスラエルはいかにして南アフリカに核兵器を売却しようとしたか」という暴露記事が発表された。http://www.guardian.co.uk/profile/chrismcgreal
ガーディアン紙のクリス・マクグリール記者によれば、これまで「イスラエル核兵器計画の存在は、1986年サンデー・タイムズ誌でモルデハイ・バヌヌによって明らかにされた。かれはディモナの核施設内部で撮った写真とともに核物質製造部門に携わった過程の細部をはじめて伝えたが、証拠書類はなにも提供しなかった。」
しかし今回、アメリカの研究者サーシャ・ポラコフ=スランスキー(SASHA POLAKOW-SURANSKY) の5月1日に発刊された著書『The Unspoken Alliance: Israel's Secret Relationship with Apartheid South Africa』で暴露された極秘文書は、イスラエルの「あいまい政策」にもかかわらず、核兵器を持っている決定的な証拠を提供していると指摘している。
ガーディアン紙は、「南アフリカの極秘文書は、イスラエルがアパルトヘイト政権にたいして核兵器の売却を申し出ていたことを明らかにしている。それは核兵器の入手にかんする初めての公的な証拠記録だ」と冒頭に記している。
記事の一部を紹介すると、
「1975年に両国の古参の政府高官のあいだで議事録が交わされた「最高機密」は、実弾ミサイルを要求した南アフリカの防衛大臣P・W・ボタと小・中・大の「三つのサイズ」を提供すると答えた当時のイスラエル防衛大臣で現在大統領であるシモン・ペレスであることを明らかにしている。」
「南アフリカの文書は、アパルトヘイト時代の軍が域内国家に対する攻撃可能な抑止力となるミサイル保有を望んでいたことを示しており、…両者が1975年3月31日に会ったことを明らかにしている。」そして「イスラエル高官の話によれば、『ジェリコの兵器庫にある核搭載可能なミサイルのいくつかを南アフリカに売却することを公式に申し出た。』」という。
「ペレスのスポークスマンはきょう(5月24日)、その報告書は根拠がなく二国間には「どんな交渉もなかった」と語った。しかし彼女は文書の真偽についてはコメントしなかった。」
「その最高機密は、会談記録に書き留められている。『ボタ大臣は、利用できる適切な弾道ミサイルを条件としてシャレーChalet設備の限定された数に関心を示した。』さらに、『ペレス大臣は、適切なミサイルとは使用可能な三つのサイズだと語った。ボタ大臣は、かれの認識を述べかつ助言を求めた。』その『三つのサイズ』は、在来型の核兵器を表すと思われる。」
ガーディアン紙は最後に、「アパルトヘイト体制の古い協力者の汚れた洗濯物を守ることについてはそんなに心配していないと、彼らは数行を黒く塗りつぶした名前入りメモを私に手渡した。」と締めくくり、そのメモも写真入りで公開されている。
3、イスラエルと日本――二重基準を乗り越えるために
イスラエルの核保有は、もはや世界周知の「公然の秘密」である。日本もまた米国との「核密約」は公然の秘密である。1972年の沖縄返還密約と1967年からのイスラエルの「秘密政策」との関連を探ることも興味深いが、ともに米国の緊密な同盟国がアジア大陸東西の両端に位置していることは偶然ではない。
NPT自体が保有国と非保有国の「二重基準」で成り立っている。二重基準は必然的に二枚舌を呼び起こす。いま欧米「国際社会」のほころびは、イラクでもアフガンでも、対イラン、対北朝鮮でもあちらこちらに二枚舌、三枚舌をはびこらせている。
二枚舌と言えば、パレスチナ問題創出の起点となったかのイギリスの二枚舌、三枚舌政策、それに乗じた「国際社会」。軍事力と隠蔽・歪曲で舌の長さも争うという「国際社会」の鉄則は、19世紀、20世紀、21世紀と変わらない。
「日米同盟」優先で沖縄基地問題への民意があらたに蓋をされようとしているが、民意を尊重する憲法体制と利権・軍事優先の安保体制のわが国戦後史をつらぬく二重基準もやはり脱却できないようだ。
「民主主義」が標榜される国において、民意がつねに踏みにじられ犠牲に供される現実と同時に、たとえば「沖縄」がかつてのベトナムのように今はイラクやアフガンにとって加害者の側に位置することはあまり自覚されない。
北朝鮮をたえず槍玉にあげながら、朝鮮半島の南側と日本列島に遍在する北朝鮮に向けた米軍の合同演習や核包囲政策は、たえず隠蔽し問題にしようともしない視野狭窄。
難癖をつけては朝鮮学校を差別し、言い逃れをしては沖縄を差別しつづけ、生活土台を奪ってはアイヌを黙殺して、経済の繁栄、私生活の平和を謳歌してきた日本国と日本人。
北朝鮮が要求する日本の植民地主義の清算には口をつぐみ隠蔽しつづける一方、相手の非を難ずる大合唱で、自らを「被害者」に変貌させる日本人お好みの被害者意識。
被害者意識といえば、イスラエルと日本はよく似ている。自らの加害者性には目をつぶり被害者意識だけをふりかざす責任回避のエートスは、ともに他者の存在と過去の歴史を見ようとしない。
イスラエルは、先住パレスチナ人、ベドウィン、強制移民ミズラヒーム・ユダヤ人を、日本は先住アイヌ、琉球人、強制連行した朝鮮人、台湾人、中国人の子孫を域内の「先進民主主義国」を自認する国内で差別しつづけている。
ともに国内外の他民族を排外・差別し、ユダヤ民族と日本民族すなわち自民族優先の単一民族国家幻想を追いかけているが、この創作された「ネーション(民族)」自体の系統性、一体性もきびしく問われつづけているのも相似的だ。
米国の類まれなる同盟国としてアジア大陸、インド洋のみならず全世界に睨みをきかすこの両国は、その国家生誕以来一貫して「欧米の尖兵」であった。イスラエルが域内アラブ諸国と「友愛」の関係を築いたことが一度もなかったように、近代日本が植民地主義を清算して東アジア諸地域と友愛関係を結んだことは一度もない。
シオニズムは「アジアの野蛮に対するヨーロッパの前哨として」始まったし、「一等国」をめざして北清事変やシベリア出兵で「活躍」した日本の欧米起拝の国民的心情(信条?)は今も変わることがない。
この東西アジアの両端で睨みをきかす両国は、アメリカの手足となって「反テロ戦争」の尖兵になっている。イスラエルはイランを、日本は北朝鮮を挑発し脅迫しつづけ「反テロ戦争」の管理体制維持の尖兵になっているのが現在である。
4、人類は公正さを獲得できるか
「反テロ戦争」下のイスラエルや日本あるいは沖縄の役割を見抜くことなしに、東アジアの「平和」も「友愛」も空々しい。二重基準の視野狭窄に自縄自縛になったところからは、公正な眼は生まれない。
植民地主義と人種主義を地で行くイスラエル占領下のパレスチナへ行くと、眼前に「二重基準」の現実がひろがる。大日本帝国の植民地主義の記憶がよみがえりアイヌや沖縄、朝鮮人の苦難がパレスチナ人と同定される。
さらに60年以上もの長きにわたってイスラエルの犯罪を許容してきた米欧「国際社会」の共犯は、このパレスチナの地においてコロニアリズムとレイシズムを継続するより巨きな意志を感じさせる。
じっさい公正の基準であった世界人権宣言からジュネーブ条約等々の国際条約を、ずたずたに引き裂いてきたのはイスラエル擁護をめぐる米欧諸国だった。
人間はしぜんな公正感をもって生きている。日本国憲法の平和主義は小学生でも理解できる。同様に国家やメディアの歪曲さえなければ、イスラエルの野蛮な政策といびつな擁護もまた小学生でも理解できるのだ。
権力とメディアを駆使した、この歴史の忘却、意図的な隠蔽、偏狭な視野狭窄。公正感も真実感もない閉塞した局面思考から、歴史的世界を担う人間的感性、人間的知性が育つのであろうか。
この公正感の攪乱と喪失が、大は国家・政府から家庭や個人にいたるまで現代的病理に陥らせているのではないか。人間はだれでも身の回りの歴史や世界や他者に眼を開かされ自らを未来(歴史・世界・他者)に投げかけて変化成長しつつ生きる。しかし、この結び目の糸に公正さがなければ、人類はどのように類としての仲間である実質をつくり上げていけるのだろうか。
パワー・ポリティクスからヒューマン・ポリティクスへの転換は、この「二重基準」の閉塞から自らを解き放つところからはじまる。パレスチナ問題は歴史的世界への認識の組み換えをうながし、新しい公正の枠組みを考えさせる格好の人類史の試練の教材だ。
パレスチナ連帯・札幌 松元保昭
===============
●イスラエルの大量破壊兵器 平和に対する脅威(山崎久隆訳/「TUP-Bulletin」HPより)
イスラエル核問題の歴史的背景がフォローされています。
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/john_steinbach.html
以下、時事ニュース
●毎日:WASHINGTON D.C 「核なき世界」への遠い道のり
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/worldwatch/news/
20100522org00m020005000c.html
●イスラエル、NPT再検討会議の最終文書を強く非難
http://www.cnn.co.jp/world/AIC201005300019.html
●IAEA理事会:「イスラエル核」議題に 91年以来初
http://mainichi.jp/select/world/news/20100608ddm007030115000c.html
●NHK:IAEA イスラエルを議題に
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100611/t10015040431000.html
●日経:IAEA、19年ぶりイスラエルの核を協議
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=
96958A9C9381959FE3E2E2E1E78DE3E2E2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL
●IAEA理事会:アラブVS米欧、イスラエル核で応酬
http://mainichi.jp/select/world/news/20100611dde007030022000c.html
●イラン:IAEA理事会で異例の日本批判
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20100611k0000m030054000c.html
------------------------------------
パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841 札幌市清田区清田1-3-3-19
TEL/FAX : 011−882−0705
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp
振込み口座:郵便振替 02700-8-75538
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1、イスラエルの核問題、ようやく国際社会のまな板に
「核廃絶」をとなえるオバマ大統領の肝いりで再開されたNPT再検討会議で噴出したイスラエルの核問題が、19年ぶりにIAEA理事会で協議されている。「イランの脅威」を叫ぶイスラエルの足元に火がついた格好だ。
日本のメディアでは、「イラン制裁」に焦点があてられイスラエル核問題は意図的に隠蔽されているようだが、NPT最終文書には「中東非核地帯構想にかんする2012年の国際会議」が予定され、事実上の核兵器保有国であるイスラエルの参加を求めるにいたった。
無論イスラエルはただちに、最終文書は「深刻な欠陥がある」と非難し「NPTに加盟していないイスラエルが決定に従う義務はない」と、2012年の国際会議への不参加を表明した。しかしイスラエルの核問題は、今月のIAEA(国際原子力機関)理事会で議題に取り上げられ9月には最終報告がなされるようだ。
イスラエルの核開発計画は、建国まもなく始められフランス、西ドイツ、南ア、そして米国の秘密裡の後ろ盾で1960年代後半から70年代には取得達成し、現在はその「あいまい政策」にもかかわらず、200〜500発の核弾頭を保有しているとみられている。
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/john_steinbach.html
2、あらたに暴露された証拠文書
NPT再検討会議の最中、先月24日、英ガーディアン紙に「イスラエルはいかにして南アフリカに核兵器を売却しようとしたか」という暴露記事が発表された。http://www.guardian.co.uk/profile/chrismcgreal
ガーディアン紙のクリス・マクグリール記者によれば、これまで「イスラエル核兵器計画の存在は、1986年サンデー・タイムズ誌でモルデハイ・バヌヌによって明らかにされた。かれはディモナの核施設内部で撮った写真とともに核物質製造部門に携わった過程の細部をはじめて伝えたが、証拠書類はなにも提供しなかった。」
しかし今回、アメリカの研究者サーシャ・ポラコフ=スランスキー(SASHA POLAKOW-SURANSKY) の5月1日に発刊された著書『The Unspoken Alliance: Israel's Secret Relationship with Apartheid South Africa』で暴露された極秘文書は、イスラエルの「あいまい政策」にもかかわらず、核兵器を持っている決定的な証拠を提供していると指摘している。
ガーディアン紙は、「南アフリカの極秘文書は、イスラエルがアパルトヘイト政権にたいして核兵器の売却を申し出ていたことを明らかにしている。それは核兵器の入手にかんする初めての公的な証拠記録だ」と冒頭に記している。
記事の一部を紹介すると、
「1975年に両国の古参の政府高官のあいだで議事録が交わされた「最高機密」は、実弾ミサイルを要求した南アフリカの防衛大臣P・W・ボタと小・中・大の「三つのサイズ」を提供すると答えた当時のイスラエル防衛大臣で現在大統領であるシモン・ペレスであることを明らかにしている。」
「南アフリカの文書は、アパルトヘイト時代の軍が域内国家に対する攻撃可能な抑止力となるミサイル保有を望んでいたことを示しており、…両者が1975年3月31日に会ったことを明らかにしている。」そして「イスラエル高官の話によれば、『ジェリコの兵器庫にある核搭載可能なミサイルのいくつかを南アフリカに売却することを公式に申し出た。』」という。
「ペレスのスポークスマンはきょう(5月24日)、その報告書は根拠がなく二国間には「どんな交渉もなかった」と語った。しかし彼女は文書の真偽についてはコメントしなかった。」
「その最高機密は、会談記録に書き留められている。『ボタ大臣は、利用できる適切な弾道ミサイルを条件としてシャレーChalet設備の限定された数に関心を示した。』さらに、『ペレス大臣は、適切なミサイルとは使用可能な三つのサイズだと語った。ボタ大臣は、かれの認識を述べかつ助言を求めた。』その『三つのサイズ』は、在来型の核兵器を表すと思われる。」
ガーディアン紙は最後に、「アパルトヘイト体制の古い協力者の汚れた洗濯物を守ることについてはそんなに心配していないと、彼らは数行を黒く塗りつぶした名前入りメモを私に手渡した。」と締めくくり、そのメモも写真入りで公開されている。
3、イスラエルと日本――二重基準を乗り越えるために
イスラエルの核保有は、もはや世界周知の「公然の秘密」である。日本もまた米国との「核密約」は公然の秘密である。1972年の沖縄返還密約と1967年からのイスラエルの「秘密政策」との関連を探ることも興味深いが、ともに米国の緊密な同盟国がアジア大陸東西の両端に位置していることは偶然ではない。
NPT自体が保有国と非保有国の「二重基準」で成り立っている。二重基準は必然的に二枚舌を呼び起こす。いま欧米「国際社会」のほころびは、イラクでもアフガンでも、対イラン、対北朝鮮でもあちらこちらに二枚舌、三枚舌をはびこらせている。
二枚舌と言えば、パレスチナ問題創出の起点となったかのイギリスの二枚舌、三枚舌政策、それに乗じた「国際社会」。軍事力と隠蔽・歪曲で舌の長さも争うという「国際社会」の鉄則は、19世紀、20世紀、21世紀と変わらない。
「日米同盟」優先で沖縄基地問題への民意があらたに蓋をされようとしているが、民意を尊重する憲法体制と利権・軍事優先の安保体制のわが国戦後史をつらぬく二重基準もやはり脱却できないようだ。
「民主主義」が標榜される国において、民意がつねに踏みにじられ犠牲に供される現実と同時に、たとえば「沖縄」がかつてのベトナムのように今はイラクやアフガンにとって加害者の側に位置することはあまり自覚されない。
北朝鮮をたえず槍玉にあげながら、朝鮮半島の南側と日本列島に遍在する北朝鮮に向けた米軍の合同演習や核包囲政策は、たえず隠蔽し問題にしようともしない視野狭窄。
難癖をつけては朝鮮学校を差別し、言い逃れをしては沖縄を差別しつづけ、生活土台を奪ってはアイヌを黙殺して、経済の繁栄、私生活の平和を謳歌してきた日本国と日本人。
北朝鮮が要求する日本の植民地主義の清算には口をつぐみ隠蔽しつづける一方、相手の非を難ずる大合唱で、自らを「被害者」に変貌させる日本人お好みの被害者意識。
被害者意識といえば、イスラエルと日本はよく似ている。自らの加害者性には目をつぶり被害者意識だけをふりかざす責任回避のエートスは、ともに他者の存在と過去の歴史を見ようとしない。
イスラエルは、先住パレスチナ人、ベドウィン、強制移民ミズラヒーム・ユダヤ人を、日本は先住アイヌ、琉球人、強制連行した朝鮮人、台湾人、中国人の子孫を域内の「先進民主主義国」を自認する国内で差別しつづけている。
ともに国内外の他民族を排外・差別し、ユダヤ民族と日本民族すなわち自民族優先の単一民族国家幻想を追いかけているが、この創作された「ネーション(民族)」自体の系統性、一体性もきびしく問われつづけているのも相似的だ。
米国の類まれなる同盟国としてアジア大陸、インド洋のみならず全世界に睨みをきかすこの両国は、その国家生誕以来一貫して「欧米の尖兵」であった。イスラエルが域内アラブ諸国と「友愛」の関係を築いたことが一度もなかったように、近代日本が植民地主義を清算して東アジア諸地域と友愛関係を結んだことは一度もない。
シオニズムは「アジアの野蛮に対するヨーロッパの前哨として」始まったし、「一等国」をめざして北清事変やシベリア出兵で「活躍」した日本の欧米起拝の国民的心情(信条?)は今も変わることがない。
この東西アジアの両端で睨みをきかす両国は、アメリカの手足となって「反テロ戦争」の尖兵になっている。イスラエルはイランを、日本は北朝鮮を挑発し脅迫しつづけ「反テロ戦争」の管理体制維持の尖兵になっているのが現在である。
4、人類は公正さを獲得できるか
「反テロ戦争」下のイスラエルや日本あるいは沖縄の役割を見抜くことなしに、東アジアの「平和」も「友愛」も空々しい。二重基準の視野狭窄に自縄自縛になったところからは、公正な眼は生まれない。
植民地主義と人種主義を地で行くイスラエル占領下のパレスチナへ行くと、眼前に「二重基準」の現実がひろがる。大日本帝国の植民地主義の記憶がよみがえりアイヌや沖縄、朝鮮人の苦難がパレスチナ人と同定される。
さらに60年以上もの長きにわたってイスラエルの犯罪を許容してきた米欧「国際社会」の共犯は、このパレスチナの地においてコロニアリズムとレイシズムを継続するより巨きな意志を感じさせる。
じっさい公正の基準であった世界人権宣言からジュネーブ条約等々の国際条約を、ずたずたに引き裂いてきたのはイスラエル擁護をめぐる米欧諸国だった。
人間はしぜんな公正感をもって生きている。日本国憲法の平和主義は小学生でも理解できる。同様に国家やメディアの歪曲さえなければ、イスラエルの野蛮な政策といびつな擁護もまた小学生でも理解できるのだ。
権力とメディアを駆使した、この歴史の忘却、意図的な隠蔽、偏狭な視野狭窄。公正感も真実感もない閉塞した局面思考から、歴史的世界を担う人間的感性、人間的知性が育つのであろうか。
この公正感の攪乱と喪失が、大は国家・政府から家庭や個人にいたるまで現代的病理に陥らせているのではないか。人間はだれでも身の回りの歴史や世界や他者に眼を開かされ自らを未来(歴史・世界・他者)に投げかけて変化成長しつつ生きる。しかし、この結び目の糸に公正さがなければ、人類はどのように類としての仲間である実質をつくり上げていけるのだろうか。
パワー・ポリティクスからヒューマン・ポリティクスへの転換は、この「二重基準」の閉塞から自らを解き放つところからはじまる。パレスチナ問題は歴史的世界への認識の組み換えをうながし、新しい公正の枠組みを考えさせる格好の人類史の試練の教材だ。
パレスチナ連帯・札幌 松元保昭
===============
●イスラエルの大量破壊兵器 平和に対する脅威(山崎久隆訳/「TUP-Bulletin」HPより)
イスラエル核問題の歴史的背景がフォローされています。
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/john_steinbach.html
以下、時事ニュース
●毎日:WASHINGTON D.C 「核なき世界」への遠い道のり
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/worldwatch/news/
20100522org00m020005000c.html
●イスラエル、NPT再検討会議の最終文書を強く非難
http://www.cnn.co.jp/world/AIC201005300019.html
●IAEA理事会:「イスラエル核」議題に 91年以来初
http://mainichi.jp/select/world/news/20100608ddm007030115000c.html
●NHK:IAEA イスラエルを議題に
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100611/t10015040431000.html
●日経:IAEA、19年ぶりイスラエルの核を協議
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=
96958A9C9381959FE3E2E2E1E78DE3E2E2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL
●IAEA理事会:アラブVS米欧、イスラエル核で応酬
http://mainichi.jp/select/world/news/20100611dde007030022000c.html
●イラン:IAEA理事会で異例の日本批判
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20100611k0000m030054000c.html
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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841 札幌市清田区清田1-3-3-19
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| 2010-06-15 00:23
| パレスチナの平和