2010年 05月 27日
Just rattle your jewelry! |
天木直人さんは日本を留守にしていて、その間書きためたものをメルマガで配信されています。それで今日取り上げたのは毎日新聞コラム。天木さんそこから引用して「安い席の人は手をたたいて、高い席にいる人は宝石をジャラジャラ鳴らして(聴いている)」と書いています。けどジョンが言ったのはちょっと違うんじゃないか、と検索してみたらありました。こう書いてあります。「ラスト・ナンバーの‘Twist And Shout’を演奏する前に、ジョンが王族ならびに貴族が顔をそろえた客席に向かって述べた『次に演奏する曲にはみなさんも参加していただきたいと思います。安い席の方は手拍子をお願いします。そのほかの方は宝石をジャラジャラ鳴らしてください』」ジャラジャラ鳴らすは just rattle your jewelry。これはすごい一言。王室の権威を軽く越えた瞬間だった。このジョークでビートルズが英国で特別な存在になる一言だったのだろうと思います。ちょっと大事なところと思って、書いておきました。
〜〜〜〜〜
火論:「反抗者」の長き不在=玉木研二 ( 毎日新聞 2010年5月18日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/opinion/ka-ron/news/20100518ddm003070049000c.html
ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の詞をジョン・レノンが走り書きした紙片が来月ニューヨークで競売にかけられる。予想落札価格は日本円で4700万から6600万円というから、ただの紙切れではない。
彼の「ビートルズはキリストより人気がある」という発言を追及された記者会見のテープもロサンゼルスで競売に、と外電が報じている。
ジョンがニューヨークの路上で射殺されて今年で30年になる。いまだにゆかりの品が高額で競り落とされたり、ニュースで世界に流れたりするのはなぜか。スターだったからばかりではない。
ジョンや彼が率いたビートルズは権威や既成価値をからかい、反抗し、次々に新しいものをつくり出してみせた。大人たちの目に不快といらだちの色を浮かばせた彼らは、1960年代の怒り、反乱する若者文化の象徴である。遠い、その時代への懐旧やあこがれが、今なお発熱続く人気の素地にあるに違いない。
英国のリバプールに育ったジョンたちは、対岸のアイルランドの血と気風を引く。抑圧と抵抗の歴史をくぐったアイルランドには痛烈な皮肉を込めた風刺の精神がある。
司馬遼太郎は街道をゆくシリーズ「愛蘭土(アイルランド)紀行」(朝日新聞社)で、ビートルズの発言を<アイルランド人のいう死んだ鍋(デッド・パン)をおもわせる>と書いた。「死んだ鍋」。無表情でグサッとくる容赦ない皮肉を指す。ジョンはとりわけその才気が鋭かったらしい。
65年。前年来の世界的人気で英国への外貨を大いに稼いだ功績でビートルズに女王から由緒ある勲章が授けられた。戦場などの活躍で同じ勲章をもらった元軍人らは「あんな連中に」と怒り、次々に勲章を返上した。
その年25歳のジョンの発言がいい。「人を殺してもらったのではない。僕らは人を楽しませてもらったのだ」
63年、王室を迎えたショーでは「安い席の人は手をたたいて、高い席にいる人は宝石をジャラジャラ鳴らして」とステージ上で皮肉っている。
その気風が若者反乱の60年代にマッチしたともいえるだろうが、摩擦も大きかった。「キリストより人気」では特に米国保守層に激しい反発と嫌悪を引き起こし、レコードや人形が炎に投じられた。身の安全が危ぶまれた。
文化から反戦、徴兵拒否まで、若者たちが身をさらし抵抗したあの時代を、ことさら美化するつもりはない。打算も逃避も過ちもあった。
ただ思う。時代に切り込み揺さぶる若い力を感じさせない社会なんて、むしろ不安ではないか。(専門編集委員)
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火論:「反抗者」の長き不在=玉木研二 ( 毎日新聞 2010年5月18日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/opinion/ka-ron/news/20100518ddm003070049000c.html
ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の詞をジョン・レノンが走り書きした紙片が来月ニューヨークで競売にかけられる。予想落札価格は日本円で4700万から6600万円というから、ただの紙切れではない。
彼の「ビートルズはキリストより人気がある」という発言を追及された記者会見のテープもロサンゼルスで競売に、と外電が報じている。
ジョンがニューヨークの路上で射殺されて今年で30年になる。いまだにゆかりの品が高額で競り落とされたり、ニュースで世界に流れたりするのはなぜか。スターだったからばかりではない。
ジョンや彼が率いたビートルズは権威や既成価値をからかい、反抗し、次々に新しいものをつくり出してみせた。大人たちの目に不快といらだちの色を浮かばせた彼らは、1960年代の怒り、反乱する若者文化の象徴である。遠い、その時代への懐旧やあこがれが、今なお発熱続く人気の素地にあるに違いない。
英国のリバプールに育ったジョンたちは、対岸のアイルランドの血と気風を引く。抑圧と抵抗の歴史をくぐったアイルランドには痛烈な皮肉を込めた風刺の精神がある。
司馬遼太郎は街道をゆくシリーズ「愛蘭土(アイルランド)紀行」(朝日新聞社)で、ビートルズの発言を<アイルランド人のいう死んだ鍋(デッド・パン)をおもわせる>と書いた。「死んだ鍋」。無表情でグサッとくる容赦ない皮肉を指す。ジョンはとりわけその才気が鋭かったらしい。
65年。前年来の世界的人気で英国への外貨を大いに稼いだ功績でビートルズに女王から由緒ある勲章が授けられた。戦場などの活躍で同じ勲章をもらった元軍人らは「あんな連中に」と怒り、次々に勲章を返上した。
その年25歳のジョンの発言がいい。「人を殺してもらったのではない。僕らは人を楽しませてもらったのだ」
63年、王室を迎えたショーでは「安い席の人は手をたたいて、高い席にいる人は宝石をジャラジャラ鳴らして」とステージ上で皮肉っている。
その気風が若者反乱の60年代にマッチしたともいえるだろうが、摩擦も大きかった。「キリストより人気」では特に米国保守層に激しい反発と嫌悪を引き起こし、レコードや人形が炎に投じられた。身の安全が危ぶまれた。
文化から反戦、徴兵拒否まで、若者たちが身をさらし抵抗したあの時代を、ことさら美化するつもりはない。打算も逃避も過ちもあった。
ただ思う。時代に切り込み揺さぶる若い力を感じさせない社会なんて、むしろ不安ではないか。(専門編集委員)
by halunet
| 2010-05-27 09:13
| 眺め/音楽