2010年 02月 28日
ナミビア共和国のベーシックインカム実験(4) |
ベーシックインカム給付連合(BIG Coalition)の要綱
ここに署名した私達組織は、以下のことを決議します。
1. 私達は、ナミビアが世界の中で貧困レベルが極端に高く、所得の不平等が最も悪化していると認識している。社会的な公正さが、ナミビアにおける経済成長と投資の前提であるため、最優先事項として不平等と貧困の削減に対処することが必要である。
2. 私達は、貧困が、HIV/AIDSを蔓延させる要因であり、その結果として経済的な安定が損われていると認識している。したがって、私達は貧困とHIV/AIDSに同時に対処していく必要がある。
3. 私達は、ベーシックインカム給付が、貧困を削減し、経済権限付与を促進するために不可欠であり、現在悲惨な悪循環に陥っている人々の潜在的な生産能力を解放できるという結論に達した。
このような認識に鑑み、私達は次の合意に達しました。
1. すべてのナミビア人が、60歳で政府支給の年金の受給資格を得るまで、ベーシックインカム給付を受け取る。
2. ベーシックインカム給付のレベルは、1人1ヵ月当たり100ナミビアドル以上とする。
3. ベーシックインカム給付は、すべてのナミビア人に無条件で給付する。
4. ベーシックインカム給付のコストは、税制の制度設計を徐々に変えることによって回収する。
私達組織は、すべての利害関係者と協力し合って、ナミビアにおけるベーシックインカム給付の実現に向けて、全力で取り組んでまいります。私達は、すべての利害関係者が私達の取り組みに参加し、本連合の一員になっていただけることを願っています。
傘下組織
ナミビア教会協議会(Council of Churches: CCN)
ナミビア労働者全国組合(National Union of Namibian Workers: NUNW)
ナミビアNGOフォーラム(Namibian NGO Forum: NANGOF)
ナミビア・エイズ・サービス組織ネットワーク(Namibia Network of AIDS Service Organisations: NANASO)
個別組織
労働資源調査研究所 (Labour Resource and Research Institute: LaRRI)
法律支援センター(Legal Assistance Centre: LAC)
BIGパイロットプロジェクト http://blog.livedoor.jp/a_tocci/
プロジェクトの内容
2006 年末、ベーシックインカム給付(Basic Income Grant、以下「BIG」と略記)連合内では、ナミビアでBIGのパイロットプロジェクトを開始することによって、BIGキャンペーンをさらに推進することが必要である、という合意が高まっていました。この背景には、ベーシックインカム給付がうまく機能し、見込み通りに貧困の軽減と経済的な発展に確かにプラスの効果があるということを、パイロットプロジェクトによって具体的に示すことができるかも知れないという考え方がありました。Kameeta司教が先頭に立って主張したこの考え方のヒントになったのは、アパルトヘイト時代の英語を使った教育施設や黒人居住区の診療所など、具体的な(あるいは神学的な視点からすれば「予言的」な)数々の模範的な取り組みでした。
実際、こうした取り組みは、最近でも、治療行動キャンペーン(Treatment Action Campaign)や、「国境なき医師団」、そしてケープタウンの州政府が運営するプロジェクトで行われています。彼らがケープタウンの黒人居住区で治療プロジェクトを開始したのは、抗レトロウイルス(ARV)療法を展開させることが望ましいが、発展途上国ではあまり現実的でないと言われていたときでした。このパイロットプロジェクトは成功しました。そして、それ以降、発展途上国における抗レトロウイルス療法の展開に対する考え方が改められたのです。
BIG 連合では、政府に対して責任を持ってベーシックインカム給付の導入を図るよう働きかけることを究極の目標としながら、この連合組織が先頭に立って模範を示すべきであると主張しています。BIG連合は、1つの村落コミュニティにおいてベーシックインカム給付を支払うために基金や寄付金の調達活動を行うことによって、具体的な行動を通した再分配の公正さの模範を示し、貧しい人達を支援すると共に、貧困の軽減と経済的発展という観点から、所得保障がどのような意味を持つのかを記録・文書化しています。BIGパイロットプログラムは、発展途上国に試験的な所得保障を具体的に導入することを目的とした、この種のものでは最初のプログラムです。
BIG 連合は、所得保障が確実に機能し、望ましい効果があることを実証するために、ナミビアのOtjivero - Omitaraという村(人口約1000人、ナミビアの首都ビントフックの東ほぼ100kmに位置)で、一定の期間(2年間、2008年1月に開始)、ベーシックインカム給付を実施しています。
BIGパイロットプロジェクトは、ベーシックインカム給付に関する提案に沿って、次の原則を順守しています。
●皆給付であること
●現金で支払うこと
●何らかの形の所得保障を確保すること
●再分配の公正さに基づくこと
個人および信徒達は毎月100ナミビアドルを基金に支払うことを約束し、また、国際的レベルでの支援も約束されました(世界にパンを(Bread for the World)、ルーテル世界連盟(Lutheran World Federation)、United Evangelical Mission、ラインラント福音派教会(Evangelische Kirche im Rheinland)、ヴェストファーレン福音派教会(Evangelische Kirche von Westfalen)、フリードリヒ・エーベルト財団(Friedrich Ebert Foundation)。基金調達活動は、この連合組織のこうした様々なネットワークや関係者に支えられて行われています。調査の実施と取りまとめは、DfSD (Desk for social Development)と労働資源調査研究所 (LaRRI: Labour Resource and Research Institute)が共同で行っています。
Otjivero - Omitara 村は、そのコミュニティ全体が登録対象となっており、パイロットプロジェクトに自主的に参加しています。さらに、ベーシックインカム給付導入の課題と成果の時系列による記録に基づいて、基礎研究が行われました。これは、DfSDやLaRRIの研究者がまとめた詳細なケーススタディを用いて、詳しく文書にまとめられています。調査方法については、国際的に有名な調査専門家のチームにより支援とアドバイスが行われています。
ナミビアの全般的な状況に関する背景情報
ナミビアは1990年に独立して以降、安定した平和な複数政党制民主主義を築いてきました。2005年3月に、ナミビア共和国の第2代大統領が就任したことにより、その民主主義体制が強固なものであることが証明されています。人口は約180万人。公用語は英語。人口の増加率は現在2.1%で、人口の44%は16歳未満。人口の62.6%が農村部、37.4%が都市部で生活しています。
1998 年のナミビアの失業率は35%。労働省による公式の統計によると、失業率は2004年までに36.7%までじわじわと増加! この悲惨な状況が若者と女性ではさらに悪化しており、十代の若者や青年の失業率は激増しています。15〜19歳の失業率は64.6%。20〜24歳では 57.4%となっています。
ナミビアの貧困は社会全体に蔓延しており、多種多様な側面を抱えています。ナミビア政府の統計局(National Planning Commission of Namibian)による最新の調査結果によると、ナミビアの人口の75.9%は、貧困ラインを下回った状態で生活しています(LLS, 1999:vii)。ナミビア家計収入支出調査(National Income and Expenditure Survey: NHIES)93/94に基づいた計算では、ナミビアの平均的な人が1日に使う金額はわずか1.5米ドル。また、ナミビアのジニ係数は0.7であり、これはナミビアが世界で最も不平等な社会であることを意味しています。
by halunet
| 2010-02-28 11:45
| ベーシックインカム