2009年 09月 20日
ペシャワール会中村哲医師の講演を聞いた |
久松重光
昨日は、東京で、ワールド・ピース・ナウの主催で、ペシャワール会の中村医師のお話を聞いてきました。会場は、国会図書館隣の社会文化会館。聴衆は、500人くらいはいたでしょうか?その報告がしたくて、今書いています。以下はその講演の要約です。
中村医師の講演は、6年前に着工した全長24kmのマルワリード用水路と「マドラサ・モスク」完成の報告であった。この用水路が横断しているこのガンベリ砂漠は、幅4km、長さ20kmのガンベリ砂漠は、「ガンベリのようにのどが渇く」とことわざに言われるほど乾燥した荒地として有名な場所で、当時誰も、この荒地に緑は戻ってくるとは信じていなかった。ペシャワール会は、1600本以上もの井戸を掘ってきたが、2000年の大旱魃以来、年々地下水の水位も低くなり、2003年3月、米軍のイラク侵攻の前日、クナール川から水を引く灌漑用水路建設の「緑の大地計画」は実行に移された。河の氾濫を抑える技術は、日本の江戸時代の完成された日本の伝統工法によっているとの事。退屈でしょうが見てくださいといって、ペシャワール会の活動のビデオが紹介される。
驚くことに、灌漑の前に一面荒涼とした砂漠は、すっかり緑に変わっている。またNGOの間でモスクやマドラサは作っていけないという取り決めがあったが、誰もやらないならば、ペシャワール会(PMS)が作ろうといって、中村医師の設計で「マドラサ、モスク」を作り、それも8月に完成。この灌漑により、15万人以上の人が、難民にならずにすみ、多くの人が戻ってきている。また自立定着村の建設も進められている。中村さんは次のように書いている。
「PMSが着手したマドラサ(伝統的神学校)建設と自立定着村そのものが、私たちの願いを象徴している。マドラサはアフガン人の生きる土俵を提供する伝統や文化の要である。地域の人々が生きる精神的なよりごころなしに、単に「生存する」ということは、絵空事に近い。どんな人間でも、自分が育った宇宙がある。それは、善悪や美醜のものさしを提供するだけではない。同時に、人知が超えてはならぬ神聖な普遍性を戴いている。「どんな悪人でも許され、どんな善人でも裁かれる」という逆説的な自然の事実が隠されている。それ故にこそ、人はその前で謙虚になり、自由を感じ、人間らしい感性を保つことができる。用水路はまさに、地域はもちろん、これを支える日本側の人々の謙虚な祈りにも支えられて、実現したのである。」
PMSは、地域の習慣を優劣で見ない。またアフガニスタンでは、日本の印象はとてもよかったが、近年では「経済利益のためなら、戦争にも協力する」というイメージができつつあり、これは日本の安全保障にとっていいことではない、と心配する。
講演後の質疑応答では、用水路が爆破されることはないか、現地が戦場になることはないのか、との質問には、用水路を爆撃するほど、米軍も馬鹿じゃないだろう。米軍のPRT(地方復興チーム)にも伝えてあるから、爆撃で壊される可能性は少ないのではないだろうか、という答え。また米軍は、無人飛行機で爆撃に来て、動くものを標的に打ってゆくから、民間人や、あるときは家畜が被害にあったりしている。
また高いところの水が涸れる心配はないのかという質問には、降雨量、降雪量は、年間そんなに減ってはいない。ただ温暖化のために、急激に雪が解けたり、水量の差が激しくなっているが、治水工事で、水量を調節できるようになったから大丈夫。また部族間の争いも、ペシャワール会が水の供給を管理して、各部族に供給するようになってから、無くなった。
また最近のアフガン情勢について。
オバマ政権が、アフガニスタンを主戦場にするというのを聞いてびっくりした。これは、先進国の病理である。ただ最近では一般人が死ぬと、話題になるようになった。ゆきずまりは誰が見ても明らか。ただ私は、最近悟った。米軍はじきに疲れてしまうから、待とうと。もっとおめでたいのは、日本政府である。給油をストップしたら、では何をするのか、といった問題の立て方が既におかしい。何をしてはいけないかを考えるべき。まずは殺すな、盗むな、の原則を守り、ゆっくりこの原則に合うように行動すればよい。ペシャワール会は、特定の政治思想に肩入れせず、誰からでもお金は貰う。また良心的な人とは、自民党の人であろうと、誰とでも仲良くする原則である。
日本に帰ってくると、規則に縛られていて、満足感を持っていないようだ。どうでもいいことは、どうでもいいことにした方がいい。現地にいる方が、ずっと気持ちがよい。
それとアフガンの選挙については、アフガンの人口は1500〜3000万と言われ、ほとんど人が自分の年齢を分かっていない。これでどうして選挙ができるのだろうか?
中村医師のお話を伺っているだけで、心が温かくなりました。そしてこの人は、きっとマザー・テレサにも匹敵する聖者だとも思いました。
昨日は、東京で、ワールド・ピース・ナウの主催で、ペシャワール会の中村医師のお話を聞いてきました。会場は、国会図書館隣の社会文化会館。聴衆は、500人くらいはいたでしょうか?その報告がしたくて、今書いています。以下はその講演の要約です。
中村医師の講演は、6年前に着工した全長24kmのマルワリード用水路と「マドラサ・モスク」完成の報告であった。この用水路が横断しているこのガンベリ砂漠は、幅4km、長さ20kmのガンベリ砂漠は、「ガンベリのようにのどが渇く」とことわざに言われるほど乾燥した荒地として有名な場所で、当時誰も、この荒地に緑は戻ってくるとは信じていなかった。ペシャワール会は、1600本以上もの井戸を掘ってきたが、2000年の大旱魃以来、年々地下水の水位も低くなり、2003年3月、米軍のイラク侵攻の前日、クナール川から水を引く灌漑用水路建設の「緑の大地計画」は実行に移された。河の氾濫を抑える技術は、日本の江戸時代の完成された日本の伝統工法によっているとの事。退屈でしょうが見てくださいといって、ペシャワール会の活動のビデオが紹介される。
驚くことに、灌漑の前に一面荒涼とした砂漠は、すっかり緑に変わっている。またNGOの間でモスクやマドラサは作っていけないという取り決めがあったが、誰もやらないならば、ペシャワール会(PMS)が作ろうといって、中村医師の設計で「マドラサ、モスク」を作り、それも8月に完成。この灌漑により、15万人以上の人が、難民にならずにすみ、多くの人が戻ってきている。また自立定着村の建設も進められている。中村さんは次のように書いている。
「PMSが着手したマドラサ(伝統的神学校)建設と自立定着村そのものが、私たちの願いを象徴している。マドラサはアフガン人の生きる土俵を提供する伝統や文化の要である。地域の人々が生きる精神的なよりごころなしに、単に「生存する」ということは、絵空事に近い。どんな人間でも、自分が育った宇宙がある。それは、善悪や美醜のものさしを提供するだけではない。同時に、人知が超えてはならぬ神聖な普遍性を戴いている。「どんな悪人でも許され、どんな善人でも裁かれる」という逆説的な自然の事実が隠されている。それ故にこそ、人はその前で謙虚になり、自由を感じ、人間らしい感性を保つことができる。用水路はまさに、地域はもちろん、これを支える日本側の人々の謙虚な祈りにも支えられて、実現したのである。」
PMSは、地域の習慣を優劣で見ない。またアフガニスタンでは、日本の印象はとてもよかったが、近年では「経済利益のためなら、戦争にも協力する」というイメージができつつあり、これは日本の安全保障にとっていいことではない、と心配する。
講演後の質疑応答では、用水路が爆破されることはないか、現地が戦場になることはないのか、との質問には、用水路を爆撃するほど、米軍も馬鹿じゃないだろう。米軍のPRT(地方復興チーム)にも伝えてあるから、爆撃で壊される可能性は少ないのではないだろうか、という答え。また米軍は、無人飛行機で爆撃に来て、動くものを標的に打ってゆくから、民間人や、あるときは家畜が被害にあったりしている。
また高いところの水が涸れる心配はないのかという質問には、降雨量、降雪量は、年間そんなに減ってはいない。ただ温暖化のために、急激に雪が解けたり、水量の差が激しくなっているが、治水工事で、水量を調節できるようになったから大丈夫。また部族間の争いも、ペシャワール会が水の供給を管理して、各部族に供給するようになってから、無くなった。
また最近のアフガン情勢について。
オバマ政権が、アフガニスタンを主戦場にするというのを聞いてびっくりした。これは、先進国の病理である。ただ最近では一般人が死ぬと、話題になるようになった。ゆきずまりは誰が見ても明らか。ただ私は、最近悟った。米軍はじきに疲れてしまうから、待とうと。もっとおめでたいのは、日本政府である。給油をストップしたら、では何をするのか、といった問題の立て方が既におかしい。何をしてはいけないかを考えるべき。まずは殺すな、盗むな、の原則を守り、ゆっくりこの原則に合うように行動すればよい。ペシャワール会は、特定の政治思想に肩入れせず、誰からでもお金は貰う。また良心的な人とは、自民党の人であろうと、誰とでも仲良くする原則である。
日本に帰ってくると、規則に縛られていて、満足感を持っていないようだ。どうでもいいことは、どうでもいいことにした方がいい。現地にいる方が、ずっと気持ちがよい。
それとアフガンの選挙については、アフガンの人口は1500〜3000万と言われ、ほとんど人が自分の年齢を分かっていない。これでどうして選挙ができるのだろうか?
中村医師のお話を伺っているだけで、心が温かくなりました。そしてこの人は、きっとマザー・テレサにも匹敵する聖者だとも思いました。
by halunet
| 2009-09-20 09:47
| テロ戦争