2009年 09月 06日
政府通貨に頭を切り替える |
雇用が完全になされるかどうかという観点からみれば、国民総動員の戦争は完璧。雇用創出が民主党政権の最大の課題だとという声で満たされている。雇用ばかりに偏ったこうした方向には、なにか危うさが隠されているということだろうか。政府通貨の発行によって日本はあの世界恐慌を脱却したということも知らなかったけれど、この政府通貨ということの意味も、そう簡単にイメージできない。紙幣に日銀券と書いてあることは知っていても、たいていは日銀を何となく政府機関の一つのように思っているので政府発行のお金だと思い込んでいる。ボク自身もそうだった。Wikiにはこう書いてある。
<日本銀行は、政府から独立した法人とされ、公的資本と民間資本により存立する。資本金は1億円で、そのうち政府が55%の5500万円を出資し、残り45%にあたる約4500万円を政府以外の者が出資する。>
Fedと呼ばれるアメリカの連銀は政府が株を所有していない純然とした民間銀行。今年中に破綻するというすごい噂が流されているけれど、ドルはこの銀行が発行している。ここが破綻をするといったいどうなるのか予想もつかないけれど、日本の民主党は政府紙幣野発行を真剣に考えざるを得なくなるのではないか、それしか道はないという関さんは民主党に提言している。
関さんのエッセイをBIメールニュースから転載します。
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『大恐慌の教訓』
関 曠野
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さすがに近代ジャーナリズムの老舗だけあって、英国の新聞にはタフな事実尊重の精神があるようだ。フィナンシャルタイムズ紙やテレグラフ紙はかなり前から目下の経済危機の報道や論評で「恐慌」depressionという言葉を使っている。そしてグラフなどを用いて危機の成り行きが1930年代の大恐慌に酷似していることを読者に示している。相変わらず「不況」でお茶を濁している日本の新聞とは大違いである。
テレグラフ紙ウェブサイト
http://www.telegraph.co.uk/
ところで30年代大恐慌に関しては、ローズヴェルトのニューディールにはせいぜい鎮痛剤の効果しかなく世界大戦へのアメリカの参戦が恐慌を終わらせたという点では研究者の見解はほぼ一致している。だが不思議なことに、なぜ戦争が恐慌を終わらせたのかを解明した書物を私は見かけたことがない。戦争は政府の負債を膨れ上がらせる破壊と殺戮のための投資だから経済にはプラスにならない。アメリカの金融危機もイラクとアフガンでの戦争による出血に無関係ではない。技術革新という副産物があるかもしれないが、市場の活気や潤沢な資金なしには軍事技術の平時転用も進まないだろう。
だが視点を変えれば戦争の経済効果は明確に説明できる。国民総動員の総力戦体制は男は徴兵、女は銃後の工場で労働という形で一時的に完全雇用を実現する。その一方豊かなアメリカでも多くの物資が配給制になり庶民は家庭菜園で食料を一部自給するほどだった。こうした耐乏生活は人々の間に充たされぬ欲望を鬱積させる。それゆえに戦禍を免れたアメリカでは、平和の回復と同時に雇用による所得に裏打ちされた有効需要が爆発したのである。恐慌を終わらせたのは国民戦争の所得保証効果にほかならなかった。しかし戦後の先進諸国はこの教訓から学ぶことがなかった。そして戦争の所得保証効果によって窮地を脱したアメリカ人は少数の反戦派以外は戦争に抵抗感がない国民になってしまった。してみれば大恐慌が戦争につながった主な原因は貿易戦争などでなく、当時の政治家たちが雇用による所得に執着したことなのである。そして雇用の確保や拡大が政治を評価する尺度であるならば、30年代のもっとも傑出した政治家はドイツのヒトラーだったことになるだろう。
前に述べたように、1930年代のアメリカのニューディールは恐慌対策としては基本的に失敗だった。しかし今日でもニューディールを実態以上に美化して評価する論者は少なくない。そうした論者は視野がアメリカに偏っているために歴史的に重要な事実を見落としている。30年代の恐慌では、アメリカとは対照的に日本とドイツはその解決に成功しているのである。日独を悪の権化とする戦時中の連合国のプロパガンダの後遺症で、この事実は無視され忘れられてきた。そしてこの日独の成功は軍国主義やナチズムには関係のない事柄である。
日本では高橋是清が国債の日銀引受けの形で政府通貨を発行し、それによって日本はいち早く恐慌から脱却できた。ドイツでは国立銀行総裁のヒャルマール・シャハトが労働財務証書の形でやはり政府通貨を発行し、その結果金も外貨準備も乏しい中で世界恐慌に直撃されたドイツを三年間でヨーロッパ最強の経済に立て直してしまった。この二人は金融の実務家で、恐慌の原因は利子と負債で実体経済を窒息させる銀行マネーにあることを直感的に知っていたのである。ちなみに彼らは共にインフレにつながる軍拡に反対し、そのために高橋は軍人に暗殺されシャハトは最後には強制収容所に送られた。
さて、今回の衆院選を経て日本の政権党となる民主党には、この成功の教訓から学ぶ気はあるだろうか。国家予算のムダをなくせば公約実現のための巨額の財源を捻り出せるという主張は、この党のアキレス腱である。そして日本の政治を官僚主導から政治家主導に変革するという公約も、予算編成権という国政の要を官僚が握っているかぎり見かけ上の変化に終わる可能性が大きい。だが政府が直接通貨を発行するならば財源の問題が消えるだけでなく、予算編成権は完全に内閣と議会のものになり官僚は予算の執行役にすぎなくなる。民主党の公約からすれば、政府通貨は一石二鳥の上策の筈である。ところがこの党は日銀の独立性を大義にしており、先にもそれを理由に日銀総
裁の人事に反対した。これでは、何よりも生活不安の解消を期待して民主党を盛り立てた国民がこの党に幻滅するのは意外に早いかもしれない。(そして言うまでもなく政府通貨はベーシックインカム実現の大前提である)。
<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)
1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て
1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。
著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、
『民族とは何か』(講談社現代新書)など。
BIメールニュースNo.007とBIメールニュースNo.012 から
発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
info@bijp.net
http://bijp.net/
<日本銀行は、政府から独立した法人とされ、公的資本と民間資本により存立する。資本金は1億円で、そのうち政府が55%の5500万円を出資し、残り45%にあたる約4500万円を政府以外の者が出資する。>
Fedと呼ばれるアメリカの連銀は政府が株を所有していない純然とした民間銀行。今年中に破綻するというすごい噂が流されているけれど、ドルはこの銀行が発行している。ここが破綻をするといったいどうなるのか予想もつかないけれど、日本の民主党は政府紙幣野発行を真剣に考えざるを得なくなるのではないか、それしか道はないという関さんは民主党に提言している。
関さんのエッセイをBIメールニュースから転載します。
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『大恐慌の教訓』
関 曠野
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さすがに近代ジャーナリズムの老舗だけあって、英国の新聞にはタフな事実尊重の精神があるようだ。フィナンシャルタイムズ紙やテレグラフ紙はかなり前から目下の経済危機の報道や論評で「恐慌」depressionという言葉を使っている。そしてグラフなどを用いて危機の成り行きが1930年代の大恐慌に酷似していることを読者に示している。相変わらず「不況」でお茶を濁している日本の新聞とは大違いである。
テレグラフ紙ウェブサイト
http://www.telegraph.co.uk/
ところで30年代大恐慌に関しては、ローズヴェルトのニューディールにはせいぜい鎮痛剤の効果しかなく世界大戦へのアメリカの参戦が恐慌を終わらせたという点では研究者の見解はほぼ一致している。だが不思議なことに、なぜ戦争が恐慌を終わらせたのかを解明した書物を私は見かけたことがない。戦争は政府の負債を膨れ上がらせる破壊と殺戮のための投資だから経済にはプラスにならない。アメリカの金融危機もイラクとアフガンでの戦争による出血に無関係ではない。技術革新という副産物があるかもしれないが、市場の活気や潤沢な資金なしには軍事技術の平時転用も進まないだろう。
だが視点を変えれば戦争の経済効果は明確に説明できる。国民総動員の総力戦体制は男は徴兵、女は銃後の工場で労働という形で一時的に完全雇用を実現する。その一方豊かなアメリカでも多くの物資が配給制になり庶民は家庭菜園で食料を一部自給するほどだった。こうした耐乏生活は人々の間に充たされぬ欲望を鬱積させる。それゆえに戦禍を免れたアメリカでは、平和の回復と同時に雇用による所得に裏打ちされた有効需要が爆発したのである。恐慌を終わらせたのは国民戦争の所得保証効果にほかならなかった。しかし戦後の先進諸国はこの教訓から学ぶことがなかった。そして戦争の所得保証効果によって窮地を脱したアメリカ人は少数の反戦派以外は戦争に抵抗感がない国民になってしまった。してみれば大恐慌が戦争につながった主な原因は貿易戦争などでなく、当時の政治家たちが雇用による所得に執着したことなのである。そして雇用の確保や拡大が政治を評価する尺度であるならば、30年代のもっとも傑出した政治家はドイツのヒトラーだったことになるだろう。
前に述べたように、1930年代のアメリカのニューディールは恐慌対策としては基本的に失敗だった。しかし今日でもニューディールを実態以上に美化して評価する論者は少なくない。そうした論者は視野がアメリカに偏っているために歴史的に重要な事実を見落としている。30年代の恐慌では、アメリカとは対照的に日本とドイツはその解決に成功しているのである。日独を悪の権化とする戦時中の連合国のプロパガンダの後遺症で、この事実は無視され忘れられてきた。そしてこの日独の成功は軍国主義やナチズムには関係のない事柄である。
日本では高橋是清が国債の日銀引受けの形で政府通貨を発行し、それによって日本はいち早く恐慌から脱却できた。ドイツでは国立銀行総裁のヒャルマール・シャハトが労働財務証書の形でやはり政府通貨を発行し、その結果金も外貨準備も乏しい中で世界恐慌に直撃されたドイツを三年間でヨーロッパ最強の経済に立て直してしまった。この二人は金融の実務家で、恐慌の原因は利子と負債で実体経済を窒息させる銀行マネーにあることを直感的に知っていたのである。ちなみに彼らは共にインフレにつながる軍拡に反対し、そのために高橋は軍人に暗殺されシャハトは最後には強制収容所に送られた。
さて、今回の衆院選を経て日本の政権党となる民主党には、この成功の教訓から学ぶ気はあるだろうか。国家予算のムダをなくせば公約実現のための巨額の財源を捻り出せるという主張は、この党のアキレス腱である。そして日本の政治を官僚主導から政治家主導に変革するという公約も、予算編成権という国政の要を官僚が握っているかぎり見かけ上の変化に終わる可能性が大きい。だが政府が直接通貨を発行するならば財源の問題が消えるだけでなく、予算編成権は完全に内閣と議会のものになり官僚は予算の執行役にすぎなくなる。民主党の公約からすれば、政府通貨は一石二鳥の上策の筈である。ところがこの党は日銀の独立性を大義にしており、先にもそれを理由に日銀総
裁の人事に反対した。これでは、何よりも生活不安の解消を期待して民主党を盛り立てた国民がこの党に幻滅するのは意外に早いかもしれない。(そして言うまでもなく政府通貨はベーシックインカム実現の大前提である)。
<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)
1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て
1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。
著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、
『民族とは何か』(講談社現代新書)など。
BIメールニュースNo.007とBIメールニュースNo.012 から
発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
info@bijp.net
http://bijp.net/
by halunet
| 2009-09-06 09:49
| ベーシックインカム
























