2008年 05月 20日
9条世界会議報告 |
http://homepage1.nifty.com/kayoko/index.htm
「ガンジー思想と私」という上記のHPに詳細な報告があります。是非ご覧下さい。
その中から前に載せた「環境と平和をつなぐ」シンポジウムが詳しく記録されています。
前のものとあわせて読むとより理解しやすいのではと思って転載します。テープからの採録かと思わせる正確なものです。
____環境と平和をつなぐ 人間中心主義から、すべての生命の安全保障へ
辻信一 ナマケモノ倶楽部 小野寺愛 ピースボート
アリス・スレーター アメリカ 核時代平和財団
星川淳 グリーンピースジャパン
アウキ・ティトゥアニャ エクアドル・コタカチ郡知事(先住民族出身)
__辻:昨日の全体会は本当に感動的だった。何が一番大切なんだろうかという問いをみんなが発するようになったのではないだろうか。そして、経済が成長することなんかじゃなくて、当たり前の日常が、本当はとても大切だったのではないか。愛する人の命が守られることが大切なのだという原点に戻りつつあるのではないか。そして、1万人が収容できる会場に3000人が入れなかったという、それだけ多くの人が集まったことに、今、変化が起きつつある事を感じる。_ 最近、エコ(環境)とピース(平和)が融合しつつある。すばらしいことだと思う。これまでは住み分けがあって、環境運動をやっている人は、平和の問題は関係ないという感じの人が多かったし、護憲派の人はタバコも吸うし、マクドナルドで食事をすることも問題だとは思わない。そういう感じだったのが、今は同じ人間が、同じことのようにエコとピースの両方について語り始めている。すばらしい兆しだと思う。
_ 非常に感動的な九条世界会議だが、一つだけ残念なことがあった。それは、九条世界会議のロゴの入ったペットボトル入りの飲み物が会場で販売されていたことだ。(辻さんは、どこにでも水筒や箸を持参するマイ水筒・マイ箸の愛用者です)ペットボトルの問題は、ひとつの大きな環境の問題であるのに、こういう会場でもペットボトル飲料が、しかもロゴまで入れて販売されていることが残念だった。また、水を求める争いもあるし、水が戦争を作り出そうとしている。自分の飲み物は自分で持参しましょう。水から変える。自ら変えるが大切。
_ アインシュタインは、「問題を引き起こしたのと同じマインドセット(心の枠組み)では、その問題を解決できない」と言っている。イヴァン・イリイチは、「現代の平和はパックスエコノミカ(経済支配の下での平和)である」と言っている。これが現代のマインドセットではないだろうか。だから、平和というものを経済支配の下から抜け出させていくことが必要ではないだろうか。
__小野寺:ゴーデンウィークをグリーンウィークと呼び変えようという運動もある。ゴールド(黄金・お金)ではなくて、グリーンを大切にということですね。
__辻:グリーンウィークにと言っている人に、あの元環境大臣で、元防衛大臣でもある小池さんもいる。あの人は日本の再軍備やアメリカの戦争への加担にも熱心だが、その一方で、地球温暖化問題にも熱心だ。エコとピースが全く切れている。どうしてそういうことが可能なのか、その構造を考えていくことも大切だ。
__アリス:今は確かに危機的状況にある。しかし、3000人が入れなかったというのは、日本人が危機を認識し始めた証拠ではないだろうか。自然災害は増えているし、トウモロコシが車の燃料に使われるようになって食料をめぐる暴動も発生している。御用科学者達は、石油、核、バイオなどのテクノロジーを推進する以外に危機を克服する道はないという。しかし、事実は異なっている。太陽、風力、潮汐、地熱などでエネルギーを十分まかなうことが可能だ。しかし、太陽などは無料で存在するもので、販売して儲けることができないから、企業はだめだと言っている。
_ これらが9条とどう関係するか。石油のために戦争する必要はない。さらに先進国は、自分達が原子力をもつのは構わないが、他の国はだめだと言っている。イランはだめだ。もし持つのなら爆撃するぞというわけだ。原発は爆弾工場でもある。六ヶ所村の再処理工場も問題である。これらは環境に対する戦争だ。しかし、九条は新しい視点を与えてくれる。環境に対する戦争のかわりに、環境との平和だ。すべての命との平和だ。ところが原発は半減期が25万年という放射性の廃棄物を出す。これは環境を破壊し、すべての命に戦争をし掛ける行為だ。原発の周囲では子どもの白血病の発生率が高くなっている。_ 原発を推進し、原発にお金をかけるということは、太陽、風力などの自然エネルギーの推進にお金が使えなくなることだ。つまり環境は悪化する。世界で使われている軍事費の1%を使うだけで、地球上の全ての子どもたちに初等教育を提供することができる。
__星川:ペットボトル入りの飲み物をここにもっているが、これは自分の家でお茶をペットボトルに入れてきたものだ。あまり潔癖な人間ではないので、ペットボトルが家に何本かある。本来は外国のようにペットボトルを再利用する仕組みを整えるべきだと思うが、そうなっていないのであれば、自分が再利用したらよいと思っている。ペットボトルは水筒ほど重くなくて便利なので、こうして持っているわけだ。
_ 環境や平和運動は余裕のある豊かの国の人の運動だと言われることがあるが、グリーンピースは途上国にも入り込んで活動している。昨日イラクのカーシムさんが、自分はピースメーカー(平和の作り手)になりたいと話されていたが、12世紀の北米大陸にあるピースメーカーが現れた。5つの部族が戦乱に明け暮れていたのを百年かかって辞めさせた。人間には理性がある。話し合いで解決しよう。ということでイロコイ連邦ができた。_ 彼らの平和の大いなる法には、「何かことを決めるときには、7世代先の事まで考えて物事を決めよう」と書いてある。やがて白人達がやってきたときに、互いの自治を認め合う先住民達の民主的な営みに接して、それが合衆国(合州国)という形態にも影響を及ぼしている。_ 24万年もの置き土産を残すことになる六ヶ所の問題については、憲法に則って話し合って決めることが行われていたら、憲法を我々が使ってきていたなら、起こらなかった問題だと思う。六ヶ所は原発が1年間で出すのと同じ量の放射能を1日で出すと言われている。さらにここでできるプルトニウムがテロとして使われたら、という核拡散の問題もある。原発はもともと経済的に成り立たないと言われているし、電力会社も本当はやりたいわけではない。第2の戦艦大和でしかないと言われている。しかし、一部の政治家が強引に推し進めるので、電力会社もやるしかない状況におかれている。どうしてこうも政治家がやりたがるのか。核武装のオプションを持っておきたいのではないかと、私は疑っている。しかし、日本が核武装したら終りだ。
_ このように大きな問題であるのに、メディアは六ヶ所の問題を一切取り上げない。9条もそうだ。9と6がタブーになっている。そういうメディアはおかしい。_ 温暖化を防止するには、日本は2050年までに二酸化炭素の排出量を8割減らさないといけない。これを原発でやろうとすると、2週間に一機建てないといけない計算になる。絶対に無理である。ところが原発推進にお金を使ってしまうと、自然エネルギーや省エネに使えるお金がなくなる。グリーンピースでは電気を3割削減して、原子力をはずそうということを提案している。それは可能である。詳しくは、グリーンピースのホームページにあるエネルギー・レボリューションを見て欲しい。_ 自然エネルギーの比率を7割にすることが必要だ。難しいと思われるかもしれないが、複利計算で行くと、毎年4%ずつということになるので、十分可能である。
__アウキ:南米の先住民は500年以上差別され、民主主義から排除されてきた。世界に民主主義は存在するか?世界に民主主義はないと言わざるを得ない。デモクラシーのデモは民衆、クラシアは力という意味だ。人民に力がないのだから民主主義は存在しない。今力を持っているのは、政治的グループであったり、経済界だ、人民ではない。民主主義はなく、石油の力、ドルの力、テレビの力がある。_ これを変えるのにはどうしたらよいか。先住民の諺に、「川を渡ろうと思ったら、水の中に入らないといけない」というのがある。まず参加する事だ。変革は参加によって生まれる。504年の大変な時代を超えて、新しい参加型民主主義を作り出そうということだ。我々先住民には、国家もなければ、法的な枠組みもないし、経験も本もなかった。しかし、先住民の知恵の中に参加型の民主主義を見つけた。_ その知恵を用いて、持続的な開発をして行こうという責任あるビジョンを持つに至った。そこでの3つの原則とは、怠け者にならない、嘘をつかない、盗まないである。なぜなら、我々先住民は、怠け者で、嘘つきで、泥棒だと言われてきたからだ。_ 我々は大きな民衆集会を毎年開いている。子どもからお年寄りまで女性も含めて、この世界会議に集まった倍の人数が毎年集まっている。そして、医療、教育、環境、税、予算について話し合っている。さらに地域における開発が、透明性を持ち、腐敗を追い出せるように政府とも話し合っている。_ 民衆集会では、一緒に働こう、成功も失敗もみんなで担い合おうとやってきて、12年間いつも勝利してきた。コタカチでは投資案件はすべて住民が参加して決めている。予算も参加型で準備している。成功の鍵は対話と多様な文化を尊重し理解することだ。_ 私が知事をやってきた12年間というのはエクアドルの危機と重なっている。憲法を変えてドルをエクアドルの通貨にした。政権は9回も交代している。_ 我々はその中で、対話によって平和文化を構築し、ユネスコは、コタカチを平和の町と宣言した。2005年4月にコタカチは100%の識字率を達成した。91の自治体がコタカチをモデルに継承しようとしている。伝統的先住民医療を見直し、医療費の無料化も実現した。2000年にはエコロジーコタカチ宣言をし、森林農法を行うことで、木材の伐採や鉱山開発にブレーキをかけてきた。15年闘って、腐敗した政治家や経済の権力者が、コタカチを食い物にするのを食い止めてきた。採掘権の無効化を可能にしてきた。_ 現政権は、選挙の時の公約に違反して、鉱山会社(銅を採掘)を歓迎している。彼らの言葉が信用できないので闘っていくことは難しいが、やるしかない。エクアドルでは石油の開発が始まってから、貧困も対外債務も増大した。銅山の開発が発展につながるとは思えない。エクアドル政府は国家予算の25%を使って、戦闘機20機を購入することに決めた。9条があれば、予算を文化や社会のために使える。
__辻:アウキ氏は詩人でもある。忙しい中で何時詩を書くのだろうと思うが、彼は、「全てのことをするための時間はある」と教えてくれた。アウキ氏をエクアドルの大統領にしようという声もある。九条を持つエクアドル、エコなエクアドルが実現したらすばらしいと思う。
__アウキ:エクアドルの中にあって、コタカチは非武装で闘っている。環境教育者や森を作る人を養成することで、鉱山で働かなくても雇用が守れるようにしている。
__辻:日本でもダムや無駄な道路など開発によって破壊が行われてきた。森を守り持続可能な発展を目指すことが課題だろう。_ 我々は経済成長というマインドセット(心の枠組み)にとらわれすぎていたのではないかと思う。豊かさを計る指標としてGDPやGNPが使われているが、ロバート・ケネディーがこんな演説をしている。_ 「今や8千億ドルを超えたアメリカのGNPだが、その中には、空気汚染や、タバコの広告や、ハイウェイでの多数の事故死者を運ぶ救急車が含まれている。家を守るための特殊な鍵、それを破って侵入する犯罪者たちを収容するための牢屋もGNPのうちだ。巨木の立ち並ぶレッドウッド原生林の破壊、美しい自然を呑み込んでゆく都市化の波も、GNPを押しあげる。戦争で使われるナパーム弾も、核弾頭も、街頭のデモ隊を蹴散らす警察の装甲車も。ウィットマン社製のライフルもスペック社製のナイフも、子どもたちにおもちゃを売るために暴力を礼賛するテレビ番組も。_ しかし、そのGNPの中には、子どもたちの健康も、教育の質も、遊びの楽しさも含まれていない。そこには詩の美しさも、夫婦の絆の強さも、政治における知的な議論も、役人たちの誠実さも、勘定されない。私たちの機知も勇気も、知識も、学びも。私たち一人ひとりの慈悲深さも、国への献身的な態度も。_ 要するにこういうことだ。国の富を測るはずのGNPからは、私たちの生きがいのすべてがすっぽり抜け落ちている」_ この演説をしたときにロバート・ケネディーは大統領になることが確実視されていた。しかしこの演説の2ヵ月後に彼は暗殺された。_ 豊かさを我々は求めてきたが、豊かさの中に幸せは入っていない。大切なものが抜け落ちているということではなかろうか。_ しかし、ここに多くの人が集まったように、「1番大切なものは何だっけ?」という問いを我々は取り戻しつつあると思う。デヴィッド・スズキは「きみは地球だ」という本で、それがなくては生きていけない大切なものは、まず空気、水、大地、太陽だと述べている。でもそればかりではない。生物の多様性が我々人間の存在を支えている。また、人間は愛なしには生きられない。愛し、愛され、世話をし、世話をされながら生きる存在だ。
__アリス:ミサイル防衛には三菱が参画している。リーダーを地域に連れ戻し、力を奪い返すために市民の力を結集する必要がある。
__星川:大切なものは何かという話があったが、自分にとって大切なのは、この世界が大丈夫で、自分達も家族も大丈夫で、命の網の目が保たれて、自分が持っている可能性をのびのびと花開かせることできることだと思う。そのためにはたくさんのYesとたくさんのNoを言って行かないといけない。目一杯生きて志の限りをやりつくす、ありつくすというのが人間のあり方だろう。_ 自衛隊や警察力が強くなっている。技を磨いて警察力を見張る必要がある。彼らは怖いイメージを植え付けようとするから。でも、政府の力が一番怖いと思う。政府がテロリストではないか。_ 民主主義はまだ始まったばかりだ。工夫を凝らして守り育てていかないといけない。我々の税金が生きる状態にしていくことも必要だ。
__辻:九条を守ろうとよく言われるが、「守る」という言い方の中にある防衛的で、「現状維持」的なニュアンスが気になる。9条がもつこれからの大きな可能性を考えると。「守る」ではもったいないと思う。九条はまだ十分に生きられていない。9条はもっともっと活かされなければならないと思う、つまり9条はいよいよこれからじゃないかと思う。9条について何も選択しないという選択肢はないと思う。9条は選びなおさなければいけない。9条が活き活きしてくるのはこれからだ。60年前に書かれた9条には、今日我々が抱いているようなエコロジーの視点は盛り込まれなかった。現代世界に起こっている動植物を含めたすべての命に対する暴力、自然界に対する戦争という視点も。しかし、これらを含むことで9条はもっと生きてくるだろう。_ 若者の中には、平和もエコも一緒というよい意味での混同がある。生き物を大切にしよう、地球を、命を大切にしよう。思いやりを持とう、親切にしよう、挨拶をしようというのと同じレベルで平和が語られる。ここにすばらしい可能性があると思う。
__会場から_ダグラス・ラミス:なぜ戦争をするかと言えば、危機状態を作れるからだ。危機状態になれば政府はやりたい放題ができる。何が大切かを話すことなどできなくなる。怠けることも悩むこともできなくなる。戦争が全てに優先する。山は壊さないほうがよいと言っても、それどころじゃない、そんなの関係ないとなる。環境破壊、人権侵害が起こる。つまり、軍国主義ができるために戦争を起こすのだ。政府はそうしたいのだ。沖縄の人はこう言う。「今の日本社会を支配しているのは9条ではなく、安保条約です」と。
__辻:これまで日米安保と九条を守るがセットになっていたと思う。日米安保の傘に入って、日本は9条でとりあえず安全であればよいというような。そして安全が保たれた中で経済成長を目指した。一度、安保や経済成長と切り離して九条を真剣に考える必要がある。
__正木高志:もし日本が九条を守るから、九条を改めて選ぶという段階に進めたら、世界に衝撃を与えると思う。九条を捨てないという人に投票するときに、私は日本人から地球市民になるのだと思う。9条はこれまで芋虫だったのかもしれない。それが蛹になり、蝶々になるときが来ている。空飛ぶ9条だ。(正木高志氏には「空飛ぶブッダ」(ゆっくり堂)という著書がある)
__アリス:アメリカの憲法は1700年代に白人男性によって書かれた。その時代、奴隷を人間として認めていなかったし、女性の権利もなかった。人々の意識が高まるにつれて奴隷制は廃止された。憲法9条も同様に長く実践していく必要がある。_ 9条は戦争を否定しただけで、エコロジーの視点が含まれているわけではないが、九条をその方向で拡大解釈していくことは可能だろう。
__星川:安保も米軍基地も憲法違反である。安保は10年ごとに見直すことになっている。1960年は大きな闘争になったし、70年も学園紛争などと一体となってそれなりに盛り上がった。ところが80年以後途絶えてしまった。2010年を日米安保を考え直すときにしたい。パックスエコロジカ、環境の下の平和を目指そう。
__アウキ:500年間で7000万人の南米の先住民の命が犠牲になっている。これは2つの大戦での犠牲者数を上回る。我々は命を愛し、平和を愛する部族だ。私のやっていることはコタカチにとどまっている。エクアドルが変わっているわけではない。しかしコタカチが変わっているそれが第一歩だ。_ ハチドリの話をしたい。山火事がおきて、森に住む動物が逃げ出していったとき、ハチドリのクリキンディがくちばしで水を運んで、1滴ずつ山火事にかけていた。ライオンがそんなことをしてなんになると言ったら、クリキンディは「私は私にできることをしているだけ」と答えた。_ 今民主主義は山火事にたとえられる。コタカチはその火事を消そうとハチドリのような働きをしているだけだ。でも、みんなが、それぞれの場でハチドリのように小さな行動をすれば、それをつなげることができれば、やがて火を消すこともできるだろう。
「ガンジー思想と私」という上記のHPに詳細な報告があります。是非ご覧下さい。
その中から前に載せた「環境と平和をつなぐ」シンポジウムが詳しく記録されています。
前のものとあわせて読むとより理解しやすいのではと思って転載します。テープからの採録かと思わせる正確なものです。
____環境と平和をつなぐ 人間中心主義から、すべての生命の安全保障へ
辻信一 ナマケモノ倶楽部 小野寺愛 ピースボート
アリス・スレーター アメリカ 核時代平和財団
星川淳 グリーンピースジャパン
アウキ・ティトゥアニャ エクアドル・コタカチ郡知事(先住民族出身)
__辻:昨日の全体会は本当に感動的だった。何が一番大切なんだろうかという問いをみんなが発するようになったのではないだろうか。そして、経済が成長することなんかじゃなくて、当たり前の日常が、本当はとても大切だったのではないか。愛する人の命が守られることが大切なのだという原点に戻りつつあるのではないか。そして、1万人が収容できる会場に3000人が入れなかったという、それだけ多くの人が集まったことに、今、変化が起きつつある事を感じる。_ 最近、エコ(環境)とピース(平和)が融合しつつある。すばらしいことだと思う。これまでは住み分けがあって、環境運動をやっている人は、平和の問題は関係ないという感じの人が多かったし、護憲派の人はタバコも吸うし、マクドナルドで食事をすることも問題だとは思わない。そういう感じだったのが、今は同じ人間が、同じことのようにエコとピースの両方について語り始めている。すばらしい兆しだと思う。
_ 非常に感動的な九条世界会議だが、一つだけ残念なことがあった。それは、九条世界会議のロゴの入ったペットボトル入りの飲み物が会場で販売されていたことだ。(辻さんは、どこにでも水筒や箸を持参するマイ水筒・マイ箸の愛用者です)ペットボトルの問題は、ひとつの大きな環境の問題であるのに、こういう会場でもペットボトル飲料が、しかもロゴまで入れて販売されていることが残念だった。また、水を求める争いもあるし、水が戦争を作り出そうとしている。自分の飲み物は自分で持参しましょう。水から変える。自ら変えるが大切。
_ アインシュタインは、「問題を引き起こしたのと同じマインドセット(心の枠組み)では、その問題を解決できない」と言っている。イヴァン・イリイチは、「現代の平和はパックスエコノミカ(経済支配の下での平和)である」と言っている。これが現代のマインドセットではないだろうか。だから、平和というものを経済支配の下から抜け出させていくことが必要ではないだろうか。
__小野寺:ゴーデンウィークをグリーンウィークと呼び変えようという運動もある。ゴールド(黄金・お金)ではなくて、グリーンを大切にということですね。
__辻:グリーンウィークにと言っている人に、あの元環境大臣で、元防衛大臣でもある小池さんもいる。あの人は日本の再軍備やアメリカの戦争への加担にも熱心だが、その一方で、地球温暖化問題にも熱心だ。エコとピースが全く切れている。どうしてそういうことが可能なのか、その構造を考えていくことも大切だ。
__アリス:今は確かに危機的状況にある。しかし、3000人が入れなかったというのは、日本人が危機を認識し始めた証拠ではないだろうか。自然災害は増えているし、トウモロコシが車の燃料に使われるようになって食料をめぐる暴動も発生している。御用科学者達は、石油、核、バイオなどのテクノロジーを推進する以外に危機を克服する道はないという。しかし、事実は異なっている。太陽、風力、潮汐、地熱などでエネルギーを十分まかなうことが可能だ。しかし、太陽などは無料で存在するもので、販売して儲けることができないから、企業はだめだと言っている。
_ これらが9条とどう関係するか。石油のために戦争する必要はない。さらに先進国は、自分達が原子力をもつのは構わないが、他の国はだめだと言っている。イランはだめだ。もし持つのなら爆撃するぞというわけだ。原発は爆弾工場でもある。六ヶ所村の再処理工場も問題である。これらは環境に対する戦争だ。しかし、九条は新しい視点を与えてくれる。環境に対する戦争のかわりに、環境との平和だ。すべての命との平和だ。ところが原発は半減期が25万年という放射性の廃棄物を出す。これは環境を破壊し、すべての命に戦争をし掛ける行為だ。原発の周囲では子どもの白血病の発生率が高くなっている。_ 原発を推進し、原発にお金をかけるということは、太陽、風力などの自然エネルギーの推進にお金が使えなくなることだ。つまり環境は悪化する。世界で使われている軍事費の1%を使うだけで、地球上の全ての子どもたちに初等教育を提供することができる。
__星川:ペットボトル入りの飲み物をここにもっているが、これは自分の家でお茶をペットボトルに入れてきたものだ。あまり潔癖な人間ではないので、ペットボトルが家に何本かある。本来は外国のようにペットボトルを再利用する仕組みを整えるべきだと思うが、そうなっていないのであれば、自分が再利用したらよいと思っている。ペットボトルは水筒ほど重くなくて便利なので、こうして持っているわけだ。
_ 環境や平和運動は余裕のある豊かの国の人の運動だと言われることがあるが、グリーンピースは途上国にも入り込んで活動している。昨日イラクのカーシムさんが、自分はピースメーカー(平和の作り手)になりたいと話されていたが、12世紀の北米大陸にあるピースメーカーが現れた。5つの部族が戦乱に明け暮れていたのを百年かかって辞めさせた。人間には理性がある。話し合いで解決しよう。ということでイロコイ連邦ができた。_ 彼らの平和の大いなる法には、「何かことを決めるときには、7世代先の事まで考えて物事を決めよう」と書いてある。やがて白人達がやってきたときに、互いの自治を認め合う先住民達の民主的な営みに接して、それが合衆国(合州国)という形態にも影響を及ぼしている。_ 24万年もの置き土産を残すことになる六ヶ所の問題については、憲法に則って話し合って決めることが行われていたら、憲法を我々が使ってきていたなら、起こらなかった問題だと思う。六ヶ所は原発が1年間で出すのと同じ量の放射能を1日で出すと言われている。さらにここでできるプルトニウムがテロとして使われたら、という核拡散の問題もある。原発はもともと経済的に成り立たないと言われているし、電力会社も本当はやりたいわけではない。第2の戦艦大和でしかないと言われている。しかし、一部の政治家が強引に推し進めるので、電力会社もやるしかない状況におかれている。どうしてこうも政治家がやりたがるのか。核武装のオプションを持っておきたいのではないかと、私は疑っている。しかし、日本が核武装したら終りだ。
_ このように大きな問題であるのに、メディアは六ヶ所の問題を一切取り上げない。9条もそうだ。9と6がタブーになっている。そういうメディアはおかしい。_ 温暖化を防止するには、日本は2050年までに二酸化炭素の排出量を8割減らさないといけない。これを原発でやろうとすると、2週間に一機建てないといけない計算になる。絶対に無理である。ところが原発推進にお金を使ってしまうと、自然エネルギーや省エネに使えるお金がなくなる。グリーンピースでは電気を3割削減して、原子力をはずそうということを提案している。それは可能である。詳しくは、グリーンピースのホームページにあるエネルギー・レボリューションを見て欲しい。_ 自然エネルギーの比率を7割にすることが必要だ。難しいと思われるかもしれないが、複利計算で行くと、毎年4%ずつということになるので、十分可能である。
__アウキ:南米の先住民は500年以上差別され、民主主義から排除されてきた。世界に民主主義は存在するか?世界に民主主義はないと言わざるを得ない。デモクラシーのデモは民衆、クラシアは力という意味だ。人民に力がないのだから民主主義は存在しない。今力を持っているのは、政治的グループであったり、経済界だ、人民ではない。民主主義はなく、石油の力、ドルの力、テレビの力がある。_ これを変えるのにはどうしたらよいか。先住民の諺に、「川を渡ろうと思ったら、水の中に入らないといけない」というのがある。まず参加する事だ。変革は参加によって生まれる。504年の大変な時代を超えて、新しい参加型民主主義を作り出そうということだ。我々先住民には、国家もなければ、法的な枠組みもないし、経験も本もなかった。しかし、先住民の知恵の中に参加型の民主主義を見つけた。_ その知恵を用いて、持続的な開発をして行こうという責任あるビジョンを持つに至った。そこでの3つの原則とは、怠け者にならない、嘘をつかない、盗まないである。なぜなら、我々先住民は、怠け者で、嘘つきで、泥棒だと言われてきたからだ。_ 我々は大きな民衆集会を毎年開いている。子どもからお年寄りまで女性も含めて、この世界会議に集まった倍の人数が毎年集まっている。そして、医療、教育、環境、税、予算について話し合っている。さらに地域における開発が、透明性を持ち、腐敗を追い出せるように政府とも話し合っている。_ 民衆集会では、一緒に働こう、成功も失敗もみんなで担い合おうとやってきて、12年間いつも勝利してきた。コタカチでは投資案件はすべて住民が参加して決めている。予算も参加型で準備している。成功の鍵は対話と多様な文化を尊重し理解することだ。_ 私が知事をやってきた12年間というのはエクアドルの危機と重なっている。憲法を変えてドルをエクアドルの通貨にした。政権は9回も交代している。_ 我々はその中で、対話によって平和文化を構築し、ユネスコは、コタカチを平和の町と宣言した。2005年4月にコタカチは100%の識字率を達成した。91の自治体がコタカチをモデルに継承しようとしている。伝統的先住民医療を見直し、医療費の無料化も実現した。2000年にはエコロジーコタカチ宣言をし、森林農法を行うことで、木材の伐採や鉱山開発にブレーキをかけてきた。15年闘って、腐敗した政治家や経済の権力者が、コタカチを食い物にするのを食い止めてきた。採掘権の無効化を可能にしてきた。_ 現政権は、選挙の時の公約に違反して、鉱山会社(銅を採掘)を歓迎している。彼らの言葉が信用できないので闘っていくことは難しいが、やるしかない。エクアドルでは石油の開発が始まってから、貧困も対外債務も増大した。銅山の開発が発展につながるとは思えない。エクアドル政府は国家予算の25%を使って、戦闘機20機を購入することに決めた。9条があれば、予算を文化や社会のために使える。
__辻:アウキ氏は詩人でもある。忙しい中で何時詩を書くのだろうと思うが、彼は、「全てのことをするための時間はある」と教えてくれた。アウキ氏をエクアドルの大統領にしようという声もある。九条を持つエクアドル、エコなエクアドルが実現したらすばらしいと思う。
__アウキ:エクアドルの中にあって、コタカチは非武装で闘っている。環境教育者や森を作る人を養成することで、鉱山で働かなくても雇用が守れるようにしている。
__辻:日本でもダムや無駄な道路など開発によって破壊が行われてきた。森を守り持続可能な発展を目指すことが課題だろう。_ 我々は経済成長というマインドセット(心の枠組み)にとらわれすぎていたのではないかと思う。豊かさを計る指標としてGDPやGNPが使われているが、ロバート・ケネディーがこんな演説をしている。_ 「今や8千億ドルを超えたアメリカのGNPだが、その中には、空気汚染や、タバコの広告や、ハイウェイでの多数の事故死者を運ぶ救急車が含まれている。家を守るための特殊な鍵、それを破って侵入する犯罪者たちを収容するための牢屋もGNPのうちだ。巨木の立ち並ぶレッドウッド原生林の破壊、美しい自然を呑み込んでゆく都市化の波も、GNPを押しあげる。戦争で使われるナパーム弾も、核弾頭も、街頭のデモ隊を蹴散らす警察の装甲車も。ウィットマン社製のライフルもスペック社製のナイフも、子どもたちにおもちゃを売るために暴力を礼賛するテレビ番組も。_ しかし、そのGNPの中には、子どもたちの健康も、教育の質も、遊びの楽しさも含まれていない。そこには詩の美しさも、夫婦の絆の強さも、政治における知的な議論も、役人たちの誠実さも、勘定されない。私たちの機知も勇気も、知識も、学びも。私たち一人ひとりの慈悲深さも、国への献身的な態度も。_ 要するにこういうことだ。国の富を測るはずのGNPからは、私たちの生きがいのすべてがすっぽり抜け落ちている」_ この演説をしたときにロバート・ケネディーは大統領になることが確実視されていた。しかしこの演説の2ヵ月後に彼は暗殺された。_ 豊かさを我々は求めてきたが、豊かさの中に幸せは入っていない。大切なものが抜け落ちているということではなかろうか。_ しかし、ここに多くの人が集まったように、「1番大切なものは何だっけ?」という問いを我々は取り戻しつつあると思う。デヴィッド・スズキは「きみは地球だ」という本で、それがなくては生きていけない大切なものは、まず空気、水、大地、太陽だと述べている。でもそればかりではない。生物の多様性が我々人間の存在を支えている。また、人間は愛なしには生きられない。愛し、愛され、世話をし、世話をされながら生きる存在だ。
__アリス:ミサイル防衛には三菱が参画している。リーダーを地域に連れ戻し、力を奪い返すために市民の力を結集する必要がある。
__星川:大切なものは何かという話があったが、自分にとって大切なのは、この世界が大丈夫で、自分達も家族も大丈夫で、命の網の目が保たれて、自分が持っている可能性をのびのびと花開かせることできることだと思う。そのためにはたくさんのYesとたくさんのNoを言って行かないといけない。目一杯生きて志の限りをやりつくす、ありつくすというのが人間のあり方だろう。_ 自衛隊や警察力が強くなっている。技を磨いて警察力を見張る必要がある。彼らは怖いイメージを植え付けようとするから。でも、政府の力が一番怖いと思う。政府がテロリストではないか。_ 民主主義はまだ始まったばかりだ。工夫を凝らして守り育てていかないといけない。我々の税金が生きる状態にしていくことも必要だ。
__辻:九条を守ろうとよく言われるが、「守る」という言い方の中にある防衛的で、「現状維持」的なニュアンスが気になる。9条がもつこれからの大きな可能性を考えると。「守る」ではもったいないと思う。九条はまだ十分に生きられていない。9条はもっともっと活かされなければならないと思う、つまり9条はいよいよこれからじゃないかと思う。9条について何も選択しないという選択肢はないと思う。9条は選びなおさなければいけない。9条が活き活きしてくるのはこれからだ。60年前に書かれた9条には、今日我々が抱いているようなエコロジーの視点は盛り込まれなかった。現代世界に起こっている動植物を含めたすべての命に対する暴力、自然界に対する戦争という視点も。しかし、これらを含むことで9条はもっと生きてくるだろう。_ 若者の中には、平和もエコも一緒というよい意味での混同がある。生き物を大切にしよう、地球を、命を大切にしよう。思いやりを持とう、親切にしよう、挨拶をしようというのと同じレベルで平和が語られる。ここにすばらしい可能性があると思う。
__会場から_ダグラス・ラミス:なぜ戦争をするかと言えば、危機状態を作れるからだ。危機状態になれば政府はやりたい放題ができる。何が大切かを話すことなどできなくなる。怠けることも悩むこともできなくなる。戦争が全てに優先する。山は壊さないほうがよいと言っても、それどころじゃない、そんなの関係ないとなる。環境破壊、人権侵害が起こる。つまり、軍国主義ができるために戦争を起こすのだ。政府はそうしたいのだ。沖縄の人はこう言う。「今の日本社会を支配しているのは9条ではなく、安保条約です」と。
__辻:これまで日米安保と九条を守るがセットになっていたと思う。日米安保の傘に入って、日本は9条でとりあえず安全であればよいというような。そして安全が保たれた中で経済成長を目指した。一度、安保や経済成長と切り離して九条を真剣に考える必要がある。
__正木高志:もし日本が九条を守るから、九条を改めて選ぶという段階に進めたら、世界に衝撃を与えると思う。九条を捨てないという人に投票するときに、私は日本人から地球市民になるのだと思う。9条はこれまで芋虫だったのかもしれない。それが蛹になり、蝶々になるときが来ている。空飛ぶ9条だ。(正木高志氏には「空飛ぶブッダ」(ゆっくり堂)という著書がある)
__アリス:アメリカの憲法は1700年代に白人男性によって書かれた。その時代、奴隷を人間として認めていなかったし、女性の権利もなかった。人々の意識が高まるにつれて奴隷制は廃止された。憲法9条も同様に長く実践していく必要がある。_ 9条は戦争を否定しただけで、エコロジーの視点が含まれているわけではないが、九条をその方向で拡大解釈していくことは可能だろう。
__星川:安保も米軍基地も憲法違反である。安保は10年ごとに見直すことになっている。1960年は大きな闘争になったし、70年も学園紛争などと一体となってそれなりに盛り上がった。ところが80年以後途絶えてしまった。2010年を日米安保を考え直すときにしたい。パックスエコロジカ、環境の下の平和を目指そう。
__アウキ:500年間で7000万人の南米の先住民の命が犠牲になっている。これは2つの大戦での犠牲者数を上回る。我々は命を愛し、平和を愛する部族だ。私のやっていることはコタカチにとどまっている。エクアドルが変わっているわけではない。しかしコタカチが変わっているそれが第一歩だ。_ ハチドリの話をしたい。山火事がおきて、森に住む動物が逃げ出していったとき、ハチドリのクリキンディがくちばしで水を運んで、1滴ずつ山火事にかけていた。ライオンがそんなことをしてなんになると言ったら、クリキンディは「私は私にできることをしているだけ」と答えた。_ 今民主主義は山火事にたとえられる。コタカチはその火事を消そうとハチドリのような働きをしているだけだ。でも、みんなが、それぞれの場でハチドリのように小さな行動をすれば、それをつなげることができれば、やがて火を消すこともできるだろう。
by halunet
| 2008-05-20 11:44
| 憲法9条と安保