2011年 01月 21日
◆JPMAメルマガ◆ パレスチナ最新情報 11・01・20 |
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■□ ニュース速報 □■
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中東が各地で沸騰しています。チュニジアでは人々の抗議行動でベン・アリ大統領が逃亡・失脚。レバノンでは、ハリリ前首相暗殺事件に関わる問題で、ヒズブッラーなどの閣僚11人が辞任して政治危機。各地で続発する長期独裁政権に抗議するデモや自殺未遂。イスラエルでも労働党が分裂し、バラク国防相らが閣内に残る一方、ベン・エリエゼル通産相らが下野しました。スーダンの南北分離を問う住民投票の結果が発表されれば、また、大きな政治的反響があるでしょう。
この先、何が起こるかわからず、中東で起きている大小の波は、パレスチナにも直接・間接の影響を及ぼすでしょう。
「民主化」を要求して他国への内政干渉、時には軍事介入や占領も辞さない。その一方で、親米であれば、独裁、腐敗、人権蹂躙にも目をつぶるあの超大国。こんなやり方が通用する時代が終わりに近づいているのかもしれません。
国連安保理には、イスラエルの入植活動を非難する決議案が提出されています。文案は、アメリカも加わっている紛争仲介グループ「カルテット」の文書を借用しています。それでもこの超大国は拒否権をちらつかせて、国際世論に逆らっています。
こんなことをしていては、アメリカは世界で孤立し、その国益を損なうと、元アメリカ国務省や国防省の高官、中東を歴任した元外交官、著名な政治家やジャーナリスト、研究者がオバマ大統領あての公開書簡を発表しました。
イスラエルでは、平和団体や人権団体の資金源を調査する議会の委員会設置が決議され、これに対する大規模な抗議デモが行われました。右傾化のなかで押され気味だった平和活動家たちが反撃に出ました。
アメリカの中東外交も変わらざるを得ないはずだと思うのですが・・・
以下、1月14日以降のニュースです。
【1月14日(金)】
■各地で「壁」抗議行動■
ラーマッラーの西北西約20kmのニイリン村での「壁」抗議行動で、10代の少年が催涙ガス弾に頭を撃たれ入院、参加者7人が負傷した。イスラエル兵1人が投石で顔にケガ、イスラエル軍は実弾射撃で応じた。
抗議デモには、エルサレムのギリシャ正教会のアタッラ・ハンナ師、同市のムフティ(イスラーム最高法官)イクリマ・サブリ師も参加、土地収用を止めるよう要求した。
目撃者によると、近くのビルイン村の抗議行動では、軍の催涙弾で足を撃たれた男性が軽傷、数10人がガスを吸い、女性2人が失神した。参加者は、軍によると約100人、住民の話では150人。
ディル・ニザーム村、とアン・ナビー・サーレフ村でも「壁」建設と土地取り上げに反対するデモなどが行われた。(1/14 Maan News)
【1月15日(土)】
■イスラエルの人道・平和団体「マッカーシズムにNo!」■
左翼団体の資金源などに関して、クネセト(イスラエル国会)調査特別委員会の設置に抗議するデモと集会がテル・アヴィヴで行われ、平和団体や人権団体、野党の活動家らが、主催者発表で15000人参加した。イスラエル社会の「右傾化」が指摘される昨今、右派政権への大規模抗議デモは久しぶり。
抗議行動には、平和団体「ピース・ナウ」「グーシュ・シャローム」人権団体「ベツェレム」など多数の市民団体と、労働、カディマ、メレツ、ハダシュ、タアル各党のクネセト議員らが参加した。参加者は、「暗黒のレジームと闘うぞ」「共に民主主義を守ろう」などのスローガンを掲げ、ミュージアム・プラザまで行進した。
クネセトは、近く、イスラエルの土地を購入する組織についても同様の背景調査を認める予定。左派系議員は「マッカーシズム」だと反発しているが、ネタニヤフ首相は、右翼グループも同様に扱うといっている。
ニツァン・ホロウィッツ議員(メレツ)は、ネタニヤフ首相、バラク国防相ともども「リーベルマン(外相、イスラエル・ベイテヌ党首)の煽動を支持し、人種主義立法を推進している」と非難、「労働党はただちに連立政権を去るべきだ」と演説。ピース・ナウのヤーリヴ・オッペンハイマー事務局長は、イスラエルはイランの(核の)脅威だけでなく、「リーベルマンの脅威」にさらされていると述べた。
最大野党カディマのメイル・シートリト議員は、リーベルマン氏が人権団体の資金源を洗い出そうとしていると非難、党内に賛成議員が居るのは残念だと述べ、次のクネセトでは、厳しい党議拘束をかけ、全員一致で反対する」と演説、拍手を浴びた。
クネセトは、今月5日、イスラエルの左翼団体への資金提供を調べる調査委員会設置を47対16で決定している。ファイナ・キルシェンバウム議員(イスラエル・ベイテヌ)提出によるもので、平和団体や人道団体は、「イスラエルのマッカーシズムだ」と激しく反発している。(1/15 Y-net News、1/16 Gush Shalom ほか)
【1月16日(日)】
■イスラエルで世界最大の淡水化プラント■
イスラエルのSDL淡水化有限会社(SDL Desalination Ltd)は、世界最大の淡水化プラント建設計画を発表した。同社は、イスラエル中部に年間1・5億トンの淡水をつくる浸透式の設備を建設、全世帯の5分の1の用水をまかない、水不足解消に寄与するという。プラントは2013年に完成の予定。(1/16 Reuters)
【1月17日(月)】
■◆イスラエル労働党が分裂◆■
エフード・バラク国防相は、イスラエル労働党を脱党、他の4議員とともに、新党「アツマウト」(Atzmaut 独立)を結成した。クネセト(イスラエル国会、定数120)での労働党議員は13人から8人に減少、ビンヤミン・ベン・エリエゼル通産相らは閣僚を辞任、アツマウトを含む与党勢力は74人から66人に減ったが過半数を維持した。
労働党では、ネタニヤフ政権と同政権に協力するバラク国防相への不満が高まり、バラク氏を党首から解任する動きが出たため、同氏が党を割って出ることになった。
アッバース大統領のアブー・ルデイネ広報官は、国防相の脱党はイスラエル内部の問題だ、と述べた。
バラク氏は、1999年から2001年まで労働党内閣の首相を務め、2000年7月にキャンプ・デーヴィッドで故アラファートPLO議長とトップ会談に失敗、翌年のクネセト選挙で労働党は敗れた。(1/17 Reuters ほか)
【1月18日(火)】
■メドヴェージェフ大統領「パレスチナ国家樹立を支持」■
ロシアのメドヴェージェフ大統領は、エリコでアッバース自治政府大統領と会談した。ロシア大統領は、会談後の記者会見で「(旧ソ連時代の1988年にパレスチナ独立を承認した)立場は変わっていない」として、「東エルサレムを首都とする国家樹立というパレスチナの権利を支持する」と述べた。イスラエルについては「(占領地への)入植活動を凍結すべきだ」と批判した。
メドヴェージェフ大統領は、イスラエルの空港ストのため、アンマン空港からアレンビー橋経由で西岸地区入りした。(1/18 Reuters、1/19 日経、ほか)
■ハマースがガザ地区再建プラン■
ガザ政権のイスマーイール・ハニヤ首相は、08年末から3週間続いたイスラエル軍の攻撃で破壊された1000戸の住宅再建計画を打ち出した。
ハニヤ首相は、起工式で、「ガザ地区占領で破壊された建物再建の第一期工事を始める」と宣言。ユーセフ・マンシ公共事業相は、「1週間以内に10か所で再建工事が始まる」と語った。
イスラエルは、セメントなど建材のガザ地区搬入を原則的に禁止、少量のセメントがシナイ半島を結ぶ地下トンネルから密輸されているが、同地区では未だに数十家族がテント暮らしを強いられている。
ドナー諸国などは、ガザ地区再建のため48億ドルの援助を約束しているが、自治政府が分裂しているため、拠出を保留している。(1/18 Reuters)
【1月19日(水)】
■アラブ諸国が国連安保理にイスラエルの入植活動非難決議案■
アラブ諸国は、イスラエルの入植活動を非難する決議案を、このほど、国連安全保障理事会に提出した。しかし、19日の国連外交筋の話では、アメリカの拒否権が予想されるため、決議案がすぐ票決に回されることはなさそうだという。
決議案は、アラブや非同盟諸国の120カ国が支持、票決されれば安保理で14カ国の賛成が得られるが、拒否権で葬られる見込み。
同案は、入植活動に関する「カルテット」(パレスチナ問題を仲介する4者=国連、アメリカ、EU、ロシア)の文書の表現を借用、「東エルサレムを含めて、1967年に占領されたパレスチナの土地につくられたイスラエルの入植地は違法で、公正で永続する包括的な平和の達成にとり主要な障害物である」と述べている。
アメリカは、拒否権を使うと難しい立場に置かれるので、パレスチナ側に対し決議案の採決を強く推さないよう説得中だと、外交筋は言う。
リヤード・マリキPA(パレスチナ自治政府)外相は、この日、パレスチナ・ラジオで、「アメリカがこの決議案に賛成もしくは棄権するよう説得することを諦めていないので、カルテットの閣僚会議まで採決を先送りしてもよい」と語った。
同閣僚会議は2月5日に開かれる予定で、入植地に関して何らかのコメントが予想される。
アメリカの次席国連代表ローズマリー・ディカルロ氏は、入植地問題がイスラエルとパレスチナの直接交渉で扱われるべきとの立場は変わらないと明言、「われわれは、この問題を安保理で扱うことに恒に反対してきた」と述べた。(1/19 Reuters, Haaretz)
■アメリカ国務省の元高官、外交官らが安保理決議に賛成を要請■
イスラエルの入植活動を非難する国連安保理決議にアメリカが賛成するようオバマ大統領に求めた、18日付の書簡が公表された。カーラ・ヒルズ元通商代表、トーマス・ピッカリング元国務次官、ロバート・パスター同次官補、フランク・カルルッチ元国防長官、エドワード・ウォーカー元・駐イスラエル大使ほか、著名な元政府高官、外交官、研究者、ジャーナリスト、ラビ(ユダヤ教導師)ら各界の著名人45人が署名している。
書簡によると、1990年に11万人だった西岸地区(東エルサレムを除く)の入植者人口が2010年には30万人を超え、このような入植地建設がジュネーヴ第4議定書49条に違反することは明らか。
筆者らは、「カルテット」が、ブッシュ政権時代の03年に「自然増(対策)を含むすべての入植活動凍結」を求めたこと、オバマ大統領が09年6月のカイロ演説で「アメリカは入植活動の継続を認めない」と言明したことを指摘。国際法違反の継続が許されないというアメリカの立場を全当事者に示すことが、国際社会で仲介者としての自国の信頼性を保つうえで重要だと述べている。
その上で、国連安保理に提案される決議案がアメリカの一貫した政策と一致するなら、拒否権の行使はアメリカの国際信用と国益をひどく損なうだろうと主張。オバマ大統領が国連大使に対し、この決議案に賛成するよう訓令することを求めている。
そして、「イスラエル・パレスチナ問題を超えて、国際法と国際社会における正当性を保障する者としてのわれわれが、本気かどうかが問われている。数10万のわが軍が最大の脅威と向き合っているこの地域で、アメリカの信頼性が問われている」と結んでいる。(1/20 Foundation for the Middle East Peace)
■国連加盟国のパレスチナ支援金拠出、ようやく目標の半分■
国連のパレスチナ占領地人道調整官、マックスウェル・ゲイランド氏は、エルサレムで記者会見、西岸・ガザ地区に必要な援助目標額の52%しか得られなかったことを示すデータを発表した。
2003年に国連が加盟諸国にパレスチナ人道支援を訴える「パレスチナ・アピール」開始以来最低の達成率で、08年の75%、09年の79%を大きく下回る。ゲイランド氏は、世界的な経済危機やパキスタンとハイチの大災害などが原因だろうと語った。
パレスチナ問題は天災ではなく、人間が作り出したもので、本来ないはずのものだと、ゲイランド氏は指摘、人道援助は必要だが、問題解決のための答えではないと述べた。(1/20 Jerusalem Post)
(出典:Foundation for the Middle East peace、Gush Shalom、Haaretz、
Jerusalem Post、Maan News、Reuters、Y-net News日経)
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by halunet
| 2011-01-21 10:02
| パレスチナの平和