2010年 11月 10日
漁船衝突と「ころび公妨」という手段 |
「漁船衝突事件」の動画について、こうした見解がまったく表に出て来ない事が今の日本の危うさではないでしょうか。全文転載します。
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<尖閣諸島沖衝突事件での海上保安庁認識の差 > 林田力
http://news.livedoor.com/article/detail/5036422/
【PJニュース 2010年9月28日】海上保安庁による中国漁船乗組員逮捕により、日中関係は対立が激化した。発端は尖閣諸島(釣魚台)沖で2010年9月7日に起きた海上保安庁巡視船「みずき」と中国籍の大型トロール漁船の衝突事故で、海上保安庁は中国漁船の船長を公務執行妨害で逮捕した。日中の対立激化の背景には、海上保安庁に対する認識の差も影響している。
日本では久場島沖で立ち入り検査のため停船命令を出して追跡中の巡視船の右舷中央部に中国漁船が衝突したと発表され、「衝突した中国漁船が悪い」という画一的な論調に染まっている。残念なことに日本人は市民感覚を有している人でも、領土問題では安易にナショナリズムに扇動されがちである。日本共産党でさえ、機関紙で以下のように主張する。
「尖閣諸島付近の日本の領海で、中国など外国漁船の違法な操業を海上保安庁が取り締まるのは、当然です。」(「尖閣諸島 日本の領有は正当」しんぶん赤旗日曜版2010年9月26日号)
しかし、日本の論理だけではアジアの視点を理解できない。アジアにとって日本の警戒すべき点は何よりも日本の侵略的軍国主義の再来である。日本の侵略が近代や現代の出発点となった国々も多い。その種の警戒心を抱いている人々にとって、今回の事件は日本国の武装組織によるアジア人民への攻撃と映る。
ほとんどの日本人は海上保安庁を軍隊と考えてはいない。海上保安庁法第25条は以下のように明記する。
「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」
自衛隊違憲論を唱える平和主義者からも海上保安庁違憲論は聞かれない。逆に社民党が2009年衆院選のマニフェストで「海賊への対処は、海上保安庁主体にします。」と掲げたように同じ活動でも自衛隊はダメだが、海上保安庁は良いという発想がある。
しかし、日本国憲法第9条第2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と陸海空軍に加えて「その他の戦力」を明記している。この点を踏まえれば、護憲派が海上保安庁を無批判に肯定することは不思議である。実際、海上保安庁は国際的には軍事的組織に位置付けられる。
米国沿岸警備隊が相当する機関であるが、これは陸軍、海軍、空軍、海兵隊と共に五軍を構成する。海上保安庁の英語表記はJapan Coast Guardであり、米国沿岸警備隊United States Coast Guardと全く同じである。自衛隊の英語表記はSelf Defense Forceで自衛軍となる。海外では軍と主張している自衛隊と同じような欺瞞を海上保安庁も行っている。
歴史的にも海上保安庁は無条件降伏により解体された海軍の穴埋めにより1948年に設立され、旧海軍出身者も入庁していた。陸軍に比べると海軍は相対的に進歩的と位置付けられるが、当時の「進歩的」とは欧米重視、アジア蔑視であり、アジア人民にとっては危険な存在である。
海上保安庁は朝鮮戦争にも参戦した歴史もある。中国は朝鮮戦争に義勇軍を派兵しており、両者は敵対関係にある。また、2008年6月10日には海上保安庁の巡視船が台湾船籍の遊漁船を衝突し、沈没させた。この事件では海上保安庁側が賠償金を遊漁船の船長に支払っている。このような海上保安庁の性格と歴史を踏まえれば、アジアから厳しい視線を向けられることも理解できる。
最後に逮捕理由の公務執行妨害であるが、これは日本の官憲が犯罪者を仕立て上げる常套手段でもある。警察官が突き飛ばされたふりをし、自ら転倒して対象者に公務執行妨害罪を適用する「転び公妨」という卑劣な手法もある。そもそも漁船と巡視船では強度が異なり、漁船から衝突することは自殺行為である。日本の市民はナショナリズムに踊らされるのではなく、国家権力の本質を冷静に分析すべきである。【了】
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<尖閣諸島沖衝突事件での海上保安庁認識の差 > 林田力
http://news.livedoor.com/article/detail/5036422/
【PJニュース 2010年9月28日】海上保安庁による中国漁船乗組員逮捕により、日中関係は対立が激化した。発端は尖閣諸島(釣魚台)沖で2010年9月7日に起きた海上保安庁巡視船「みずき」と中国籍の大型トロール漁船の衝突事故で、海上保安庁は中国漁船の船長を公務執行妨害で逮捕した。日中の対立激化の背景には、海上保安庁に対する認識の差も影響している。
日本では久場島沖で立ち入り検査のため停船命令を出して追跡中の巡視船の右舷中央部に中国漁船が衝突したと発表され、「衝突した中国漁船が悪い」という画一的な論調に染まっている。残念なことに日本人は市民感覚を有している人でも、領土問題では安易にナショナリズムに扇動されがちである。日本共産党でさえ、機関紙で以下のように主張する。
「尖閣諸島付近の日本の領海で、中国など外国漁船の違法な操業を海上保安庁が取り締まるのは、当然です。」(「尖閣諸島 日本の領有は正当」しんぶん赤旗日曜版2010年9月26日号)
しかし、日本の論理だけではアジアの視点を理解できない。アジアにとって日本の警戒すべき点は何よりも日本の侵略的軍国主義の再来である。日本の侵略が近代や現代の出発点となった国々も多い。その種の警戒心を抱いている人々にとって、今回の事件は日本国の武装組織によるアジア人民への攻撃と映る。
ほとんどの日本人は海上保安庁を軍隊と考えてはいない。海上保安庁法第25条は以下のように明記する。
「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」
自衛隊違憲論を唱える平和主義者からも海上保安庁違憲論は聞かれない。逆に社民党が2009年衆院選のマニフェストで「海賊への対処は、海上保安庁主体にします。」と掲げたように同じ活動でも自衛隊はダメだが、海上保安庁は良いという発想がある。
しかし、日本国憲法第9条第2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と陸海空軍に加えて「その他の戦力」を明記している。この点を踏まえれば、護憲派が海上保安庁を無批判に肯定することは不思議である。実際、海上保安庁は国際的には軍事的組織に位置付けられる。
米国沿岸警備隊が相当する機関であるが、これは陸軍、海軍、空軍、海兵隊と共に五軍を構成する。海上保安庁の英語表記はJapan Coast Guardであり、米国沿岸警備隊United States Coast Guardと全く同じである。自衛隊の英語表記はSelf Defense Forceで自衛軍となる。海外では軍と主張している自衛隊と同じような欺瞞を海上保安庁も行っている。
歴史的にも海上保安庁は無条件降伏により解体された海軍の穴埋めにより1948年に設立され、旧海軍出身者も入庁していた。陸軍に比べると海軍は相対的に進歩的と位置付けられるが、当時の「進歩的」とは欧米重視、アジア蔑視であり、アジア人民にとっては危険な存在である。
海上保安庁は朝鮮戦争にも参戦した歴史もある。中国は朝鮮戦争に義勇軍を派兵しており、両者は敵対関係にある。また、2008年6月10日には海上保安庁の巡視船が台湾船籍の遊漁船を衝突し、沈没させた。この事件では海上保安庁側が賠償金を遊漁船の船長に支払っている。このような海上保安庁の性格と歴史を踏まえれば、アジアから厳しい視線を向けられることも理解できる。
最後に逮捕理由の公務執行妨害であるが、これは日本の官憲が犯罪者を仕立て上げる常套手段でもある。警察官が突き飛ばされたふりをし、自ら転倒して対象者に公務執行妨害罪を適用する「転び公妨」という卑劣な手法もある。そもそも漁船と巡視船では強度が異なり、漁船から衝突することは自殺行為である。日本の市民はナショナリズムに踊らされるのではなく、国家権力の本質を冷静に分析すべきである。【了】
by halunet
| 2010-11-10 04:16
| 安全保障