2010年 10月 08日
パレスチナ最新情報 10・10・07 |
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■□ ニュース速報 □■
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PLOは、2日、入植活動が停止されない限り、イスラエルとの直接交渉は行わないと決めました。当然ですね。EUは、入植凍結の継続を繰り返し主張しています。アメリカも入植活動を批判していますが、どこまで本気でしょうか。
ネタニヤフが、新規の入植活動凍結とバーターにとんでもない政策を打ち出しました。6、7日のイスラエル紙が報じています。イスラエル国民、または国民になろうとする移民?に対し、「ユダヤ・民主国家」としてのイスラエルへの忠誠宣誓を義務づけるという立法措置です。「ユダヤ人」とはされないマイノリティにとって、「私は二級市民です」と言わせるに等しい。
右翼政党「イスラエル・ベイテヌ」党首のアヴィグドル・リーベルマン外相は、バーターを否定、宣誓義務は必要で、入植活動凍結を認めるなど論外と発言しています。
イスラエルのガザ地区攻撃「カスト・レッド」作戦から間もなく2年になります。この作戦中、パレスチナ人の子どもに銃を突きつけ、爆発物が入っているかもしれないというバッグを開けさせたとして、当時のイスラエル兵が有罪判決を受けました。同作戦に従事したイスラエル兵士で、刑事訴追を受けたのは、彼を含め4人だといいます。トカゲの尻尾切ですね。国際法廷でなければ、この時の戦争犯罪は裁けないでしょう。
ラーマッラーに近いアフラ入植地近隣の村民らが、入植者たちがつくった障害物の撤去を求めて最高裁に提訴しました。バリケードや柵のため、自分たちの農地で作業できないというのです。イスラエル当局が建設している「壁」の「民間版」です。占領当局がこれを黙認しているので止めさせるようにという訴えです。このようなケースはほかにもありそうです。
「壁」をくぐってエルサレムに行こうとしたパレスチナ人労働者が、治安部隊に射殺されました。かつてのベルリンの壁を思い出します。
以下9月30日以降のニュースです。
【9月30日(木)】
■ミッチェル特使がアッバース大統領と会談■
アメリカの中東特使ジョージ・ミッチェル氏がラーマッラーでパレスチナ自治政府のアッバース大統領と会談した。会談後、ミッチェル特使は、「われわれは、当事者の間で交渉継続が可能になるような共通点を探す努力を続けている」と語った。ミッチェル氏は、前日には、エルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相と会談している。(9/30 Reuters)
■ベドウィンの子どもたちに新しい学校■
同日のWAFA(パレスチナ解放通信)によると、エルサレム郊外のアル・ジャハリン村に、児童300人の新しい学校が完成、開校式が行われた。子どもたちは、それまで、貨物用のコンテナで授業を受けていた。
新設校は、6教室に台所やバス・トイレがあり、総工費15万ユーロはドイツ政府が提供、UNDPが工事を担当した。
アル・ジャハリン部族の故郷はネゲヴ地方だが、1948年にラーマッラーとエルサレムの間に移動。1967年以降は遊牧生活ができなくなり、エルサレム郊外に移住したが、イスラエルが大入植地「マアレ・アドミーム」建設に着工したため再び土地を追われ、遊牧生活をあきらめ、エルサレムとアブー・ディス(エルサレム郊外)の間に定住、アル・ジャハリン村をつくった。
開校式は、1週間前の23日に行われ、教育省のアブー・ザイド副長官らパレスチナ自治政府高官、ドイツ外交官やUNDP関係者らが参列した。(9/30 WAFA)
【10月1日(金)】
■ミッチェル特使「双方とも間接交渉継続では一致」■
イスラエル、パレスチナの間でシャトル外交していた、ジョージ・ミッチェル中東特使は、ラーマッラーで記者会見、ネタニヤフ首相とアッバース大統領が、間接交渉の継続で一致していると語った。「(和平交渉の)障害物は残っているが、(和平を達成しようという)われわれの決意は変わらない」と特使は述べた。
EUのカザリン・アシュトン外交代表は、「(入植活動)凍結の終了が長期的な平和の可能性を脅かすことにならないか、たいへん憂慮している」と語った。(10/1 Reuters)
■国連パレスチナ委員会、入植活動の完全停止を要求■
国連パレスチナ委員会(Committee on the Exercise of the Inalienable Rights of the Palestinian People)は、東エルサレムを含むすべての入植活動の完全停止などを求めた年次報告書を承認した。
報告書は24ページで、09年10月7日以降の占領地に関する状況をまとめたもの。レポートは、パレスチナ=イスラエル交渉の開始を歓迎する一方、入植活動停止、ガザ地区封鎖解除、五月のガザ支援船団強襲事件に関する独立した信頼に足る調査の実施などを要求している。
同委員会は、報告を第65回国連総会に送ることを決めた。(10/2 WAFA)
【10月2日(土)】
■◆PLO「入植活動凍結せねば、交渉中断」◆■
ラーマラ―で開かれたパレスチナ解放機構(PLO)執行委員会は、イスラエルによる西岸地区での入植住宅建設が凍結されない限り、和平交渉を継続しないとの方針を決めた。パレスチナ=イスラエル直接交渉は、9月2日に始まったばかり。
アッバースPLO議長(パレスチナ自治政府大統領)は、8日の開催が決まったアラブ連盟会合での協議を経て交渉継続の是非を決断する。
会議後、アッバース議長とヤーセル・アブドゥ・ラッボPLO事務局長は、アメリカと「カルテット」による「会談継続の努力を妨げた責任はイスラエルにある」と述べた。アブドゥ・ラッボ事務局長は、イスラエルが、会談の継続を望んでいるかのように見せかけながら入植活動凍結を打ち切り、「世界とイスラエルの世論を欺いている」と非難した。(10/4 毎日、Maan News)
最近の入植地問題の背景など、毎日新聞の記事全文は:
http://mainichi.jp/select/world/mideast/archive/news/2010/10/04/20101004
ddm007030051000c.html
【10月3日(日)】
■少年を「人間の盾」にしたイスラエル兵、有罪■
ガザ地区侵攻(08年12月~09年1月)の際に、爆発物が仕掛けられた疑いのあるカバンを当時9歳のパレスチナ人少年に開けさせて「人間の盾」に使ったとして、イスラエル軍兵士2人(既に除隊)が権限を逸脱した罪などに問われた裁判で、軍事裁判所は、有罪判決を下した。最長で禁固3年となる刑期は後日に決まる。
イスラエル・メディアによると、兵士2人は09年1月、ガザ市のアパートを占拠した際に発見した複数のカバンを点検するため、住民の少年に命じて開けさせた。また、開けられなかったカバンに向けて銃を発射した。少年は恐怖のあまり、その場で尿を漏らしたという。爆発物は見つからず、少年にけがはなかった。
非戦闘員を軍事行動に使った交戦規則違反だとする人権団体の告発などを受け、軍検察当局などが調べ、今年3月に起訴した。判決によると、兵士2人は違法性を認識していた。
少年の母親によると、少年はこの経験後、アパートの鍵を常時閉じることにこだわるようになった。「判決は、少しは恐怖体験への慰謝になる」と話した。
イスラエル政府が今年7月に国連へ提出した報告書によると、ガザ侵攻にかかわり交戦規則違反の罪で起訴された兵士は計4人。今回の2人が最初の判決。他に、白旗を掲げていたパレスチナ人集団の殺害と略奪行為の各罪で起訴されている。これら4人を除けば交戦規則違反はなかったとしている。(10/4 毎日)
■エルサレムでパレスチナ人射殺される■
西岸地区から無許可で東エルサレムに入ったパレスチナ人の男、イッザッディーン(37)が、イスラエルの治安部隊に射殺された。警察当局は、男が隊員のピストルを奪おうとしたと述べたが、目撃者によると、パレスチナ人は逃げ遅れて撃たれたらしい。
目撃者は、撃たれた男を含む6人の労働者とともに、分離壁を潜り抜けエルサレムに入ったところ、治安部隊に見つかり走って逃げた。目撃者が丘の上まで逃げ、様子をみたところ、イッザッディーンは隊員らに追いつかれて攻撃され、撃たれた。彼は音もなく地面に倒れたという。
イスラエル当局は、事件は調査されるだろうと語った。(10/3 Reuters)
■入植者が設置した障害物撤去を求め、近隣住民が提訴■
西岸地区の入植地近隣住民の意向を受けて、イスラエルの人権団体「イェシュ・ディン」は、オフラ入植地に対し、住民の自由で安全な通行を妨げている障害物の撤去を命じるようイスラエル最高裁に提訴した。
イェシュ・ディンは、隣接のアイン・ヤブルード村の住民3人の代理として、最高裁が、イスラエル軍と民政当局に対し、オフラ入植地と周辺一帯の入植地で構成する「マッテ・ビンヤミン地区評議会」に障害物の撤去を命じるよう訴えた。訴えによると、これらの障害物は、アイン・ヤブルードの村人が自分たちの私有地に自由に行き来するのを妨げている。
訴状は、イェシュ・ディンの3弁護士を通じて提出。軍司令官と占領行政当局に対し、住民たちの「移動の自由、彼らの所有する農地への自由往来を保障し、住民たちが妨害を受けず安心して農地を耕作できるよう」必要な措置をとることを求めた。
オフラ入植地は、ラーマッラーの都心から北西約10km、アイン・ヤブルード村とシルワド村に接する地域に1975年建設され、2008年の人口は2735人。WAFAによると、(イスラエル当局の)許可も受けず、2つの村の私有地に違法につくられた。
この10年間、提訴の3人を含むアイン・ヤブルード村の住民たちは、違法につくられたバリケードや柵により、自分たちの私有地に近づくことを阻止されてきたが、イスラエル当局はこれを容認してきたという。(10/3 WAFA)
09年12月には、イェシュ・ディンの支援でシルワド村の住民が同様の訴訟を起こしている。(10/3 WAFAほか)
近辺の地図は、以下のサイトで、ラーマッラー付近を拡大してみてください:
http://joshberer.files.wordpress.com/2009/12/separation_barrier_map.jpg
【10月4日(月)】
■イスラエル、平和賞受賞者を退去処分■
イスラエル最高裁は同日、ノーベル平和賞受賞者(1976年)で、英国・北アイルランドの平和活動家マイレッド・マグワイア氏に対し、国外退去を命じた。
同氏は5日未明、欧州行きの便で出国した。同氏は9月28日、女性活動家支援のため同国の空港に到着したが、入国を拒否されていた。
マグワイア氏は、イスラエルのガザ地区封鎖に抗議するため、今年6月にガザ支援船に乗船、拘束された後に国外退去処分を受けている。イスラエル当局は前回退去時に10年間の入国禁止をマグワイア氏に通告したと主張しているが、同氏の弁護人は否定している。(10/4 読売)
【10月5日(火)】
■「囚人」と見られる女性の周りで踊るイスラエル兵の動画■
目隠しされたパレスチナ人女性の周りを踊るイスラエル兵――ショッキングな動画がYouTubeにアップされたことについて、イスラエル軍当局は調査を始めると発表した。
この動画では、目隠しされ、スカーフで頭を覆い、長い黒装束を着たイスラーム教徒の女性が白い壁ぎわに立たされ、イスラエル兵らしき制服を着た若い男がその周りをダンス。時々、女性に身体を接触させるようなしぐさをしている。女性はほとんど動かず、身元はわからないが、イスラエル側に捕まった囚人のように見える。軍は、「このような画像をヴィデオ公開するような行為を非難する」と声明した。
イスラエルの人権グループ「イェシュ・ディン」は、「吐き気をもよおす画像だ」と非難、軍に対し犯罪として捜査するよう要求した。仮にヴィデオがつくり物だとしても、イスラエル兵のなかに敵を人間扱いしない者たちがいることを、この事件は示していると、イェシュ・ディンのツィンメルマン氏は語った。
8月には、元イスラエル兵の若い女性が、目隠しをされた、囚人らしいパレスチナ人の傍で「記念撮影」し、ネットにアップして問題になったばかり。
女性に対する侮辱は、イスラーム世界、アラブ世界で、とくに激しい怒りを招くことが知られている。(10/5 AP)
【10月6日(水)】
■「入植地凍結」と「『ユダヤ国家』への忠誠義務」をトレード■
同日のHaaretzによると、イスラエルのネタニヤフ首相は、予想される新たな入植活動凍結の埋め合わせに、非ユダヤ系イスラエル市民に対する「ユダヤ・民主国家(Jewish and democratic state)としてのイスラエル」への忠誠宣誓義務付けを計画、10日のクネセト(イスラエル国会)提出を予定している。この「埋め合わせ」政策は、少数与党の労働党に無断で打ち出されたため、同党は強く反発している。
和平直接交渉再開の条件として、パレスチナ側は入植活動全面凍結を主張、EUやアメリカなども凍結延長を要請。ネタニヤフ首相は、あらたな凍結措置への右翼諸党からの反発を和らげるため、議論の多い「ユダヤ国家への忠誠宣誓」義務づけを持ち出したとみられる。
イスラエルは「ユダヤ国家」(1948年の建国宣言)として樹立されたが、現在も、アラブ系を中心に「非ユダヤ人」のマイノリティは人口の20%を超える。彼らにとって、「ユダヤ国家」としてのイスラエルへの忠誠宣誓は、自らを「二級市民」と認めることにつながり、アラブ系市民は強く反発、左派やリベラル派のユダヤ系市民からも批判されている。
閣内の労働党4閣僚のうち2人は、宣誓義務に反対を表明。アヴィシャイ・ブラヴェルマン氏(マイノリティ問題担当相)は、「無責任な酷い話だ」と非難、バラク党首(国防相)に対し、この動きを阻止するため党員集会を開くよう求めた。(10/6 Haaretzほか)
この動きに対し、イスラエルのアラブ系市民で組織するアラブ高等監視委員会(Arab Monitoring Committee)は、イスラエルの全政党宛てに、宣誓義務に反対する文書発送の準備に着手、同様の書簡を「カルテット」(国連、アメリカ、EU、ロシア)やアラブ連盟とパレスチナ自治政府にも送る予定。
「バラド」所属のクネセト議員ジャマル・ザハルカ氏は、Haaretzの取材に対し、一刻も無駄にせず、この問題を国際社会に伝える必要があると語った。「イスラエルの人種主義は、国際社会で悪い前例になる。『ユダヤ・民主国家』は悪い冗談、(マイノリティを差別する)『ユダヤ国家』が『民主的』であるはずがない」とザハルカ議員は語った。(10/7 Haaretz)
【10月7日(木)】
■リーベルマン外相「『ユダヤ国家』への忠誠宣誓は必要」■
リーベルマン外相(イスラエル・ベイテヌ党首)は、「ユダヤ・民主国家」としてのイスラエルへの忠誠宣誓義務について、「入植地凍結延長と引き換え」説を否定、ガザ支援船団に乗り込んだクネセト議員を引き合いにその理由を説明した。イスラエル・ラジオが報じた。
ハンーン・ゾアビ議員(バラド所属)は、ガザ封鎖に抗議して、5月31日に拿捕されたガザ支援船団に乗船。クネセトでは、右派系議員から激しく攻撃された。ゾアビ氏は、6日、忠誠宣誓義務は「ファシスト」のやることだと強く批判している。
イスラエル・ベイテヌは、ロシアからの移民を基盤とする右翼政党。同党は、条件いかんに関わらず入植活動凍結に同意することはないとしている。(10/7 Jerusalem Post)
(出典: AP、Haaretz、Jerusalem Post、Reuters、WAFA、毎日、読売)
by halunet
| 2010-10-08 16:26
| パレスチナの平和