2009年 11月 01日
「ベーシックインカム」の一人歩きの前に |
10月23日の深夜、「朝まで生テレビ」の中で、ベーシックインカムが議論の中心となったことが、ネットで結構話題になっているようです。番組のテーマは「激論! 若者に未来はあるのか?!」ですから、BIが話題の中心の一つになったのはパネリストの一人である、東浩紀氏(オタク批評家、東工大教授)がSNS直接民主制(またはデータベース民主制)とBIをワンセットにして、これからはこの二つで行くしかないと言い出したことによるようです。BIについてはほかの誰からも異論はでなかったというのも意外です。彼の来るべき社会のヴィジョンの具体性に誰もかなわなかったということでしょうか?その辺は良く判りませんが詳しくは東氏のブログでどうぞ。
他にも例えば若手の経済学者・飯田泰之氏との対談本「脱貧困の経済学」で雨宮処凛さんは「ベーシックインカムを月15万円よこせ!」と気炎を上げていたりしています。こうなるとBIが普通の言葉として使われ始めているような気配がしています。それは喜ばしい事かもしれないけれど、それはそれとして、この今が肝心なのかも。変な一人歩きが始まる前にもっとやっておくべきことはないのでしょうか?この本で「ベーカム」なんて縮め方をしているのですが、なじめません(笑)。
今こそ丁寧なBI論議を、ということで以前紹介した「ベーシックインカム入門」(光文社新書)の著者である山森亮氏の呼びかけをBIメールニュース(No.020 2009.10.31発行)から転載します。
ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか
同志社大学経済学部教員 山森亮
───────────────────────────────────
中谷巌さんが還付金つき消費税を提案したり、元ライブドア社長の堀江貴文さん
がベーシック・インカムに賛同したりと、ベーシック・インカムを巡る議論はこの
1,2年で一気に広がってきた。政治の世界では、新党日本が今年に入ってベーシッ
ク・インカムを公約に掲げている。また自民党、民主党はじめ幾つかの政党の議員
が議論をしている「給付つき税額控除」も部分的なベーシック・インカムといって
もよい。
こうした部分的なもの、額の少ないものではなくて、生活するに足る額のベーシ
ック・インカムを全ての人に支給するということを具体的に制度として導入するに
は、幾つも乗り越えなくてはいけない山がある。まず真っ先に批判されるのは、な
により財源問題だろう。
これらの山があるにもかかわらず、生活をするに足るベーシック・インカムの給
付を今声を大にして要求していくことの意味はなんだろうか。理念としてのベーシ
ック・インカムが承認されるということは、生存権が無条件であることの確認であ
る。この確認さえできれば、社会保障を巡る論議は、「○×にいくら掛かる(だか
らやらない)」ではなく、「○×にいくら掛かるけれども、ベーシック・インカム
に比べたら微々たる額だから、とりあえずやろう」と変わっていくだろう。それだ
けで大きな変化がおこるはずだ。
京都で二つのベーシック・インカムを巡る議論の場が持たれる。
一つは日本を半世紀以上にわたって研究してきたロナルド・ドーアさんを囲むシ
ンポジウムである。ドーアさんは日本研究者としては非常に有名であるが、ベーシ
ック・インカムについて肯定的に論じられていることは日本では殆ど知られていな
い。このシンポジウムはドーアさんがベーシック・インカムについて日本語で語ら
れるおそらく最初のシンポジウムである。シンポジストに『日本の経済格差』など
でここ10年の格差論議の火付け役となられた経済学者の橘木俊詔さん、日本で始め
て体系的にベーシック・インカムを紹介された小沢修司さん、新進気鋭のフェミニ
ストの政治思想家の岡野八代さんをお迎えして、フロアも交えて活発な議論を行い
たいと思っている。
もう一つは、ベーシック・インカム日本ネットワークの設立大会と関連行事であ
る。2004年にできたベーシック・インカム世界ネットワークと連携しながら、来年
3月に日本にもネットワークが立ち上がる。ILOで長らくベーシック・インカムを提
唱され、ベーシック・インカム世界ネットワークの代表も勤められたガイ・スタン
ディングさん、イタリアで不安定就労者たちのメーデーなどに関わってこられた経
済学者のアンドレア・フマガッリさんなどを国外からはお迎えして、国内からは、
さまざまな現場でベーシック・インカムを主張されだした方たちを結集して開かれ
る。
いずれも詳細は下記の情報をご参照下さい。
<山森亮(やまもりとおる)氏 プロフィール>
同志社大学経済学部教員。専攻は社会政策。
『ベーシック・インカム入門』の著者。ベーシック・インカムについては国際学術
誌Basic Income Studiesの編集委員を務めた他、日本では雑誌『現代思想』『VOL』
『経済セミナー』などに寄稿。
────────────────────────────────
京都で開催されるベーシック・インカムのイベント
────────────────────────────────
ベーシック・インカム日本ネットワーク設立前夜祭、
設立記念国際シンポジウム、設立大会
日時:2010年3月26日(金)-27日(土)(入場無料・申込不要)
場所:同志社大学今出川キャンパス
詳細は下記にて更新予定
http://tyamamor.doshisha.ac.jp/
他にも例えば若手の経済学者・飯田泰之氏との対談本「脱貧困の経済学」で雨宮処凛さんは「ベーシックインカムを月15万円よこせ!」と気炎を上げていたりしています。こうなるとBIが普通の言葉として使われ始めているような気配がしています。それは喜ばしい事かもしれないけれど、それはそれとして、この今が肝心なのかも。変な一人歩きが始まる前にもっとやっておくべきことはないのでしょうか?この本で「ベーカム」なんて縮め方をしているのですが、なじめません(笑)。
今こそ丁寧なBI論議を、ということで以前紹介した「ベーシックインカム入門」(光文社新書)の著者である山森亮氏の呼びかけをBIメールニュース(No.020 2009.10.31発行)から転載します。
ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか
同志社大学経済学部教員 山森亮
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中谷巌さんが還付金つき消費税を提案したり、元ライブドア社長の堀江貴文さん
がベーシック・インカムに賛同したりと、ベーシック・インカムを巡る議論はこの
1,2年で一気に広がってきた。政治の世界では、新党日本が今年に入ってベーシッ
ク・インカムを公約に掲げている。また自民党、民主党はじめ幾つかの政党の議員
が議論をしている「給付つき税額控除」も部分的なベーシック・インカムといって
もよい。
こうした部分的なもの、額の少ないものではなくて、生活するに足る額のベーシ
ック・インカムを全ての人に支給するということを具体的に制度として導入するに
は、幾つも乗り越えなくてはいけない山がある。まず真っ先に批判されるのは、な
により財源問題だろう。
これらの山があるにもかかわらず、生活をするに足るベーシック・インカムの給
付を今声を大にして要求していくことの意味はなんだろうか。理念としてのベーシ
ック・インカムが承認されるということは、生存権が無条件であることの確認であ
る。この確認さえできれば、社会保障を巡る論議は、「○×にいくら掛かる(だか
らやらない)」ではなく、「○×にいくら掛かるけれども、ベーシック・インカム
に比べたら微々たる額だから、とりあえずやろう」と変わっていくだろう。それだ
けで大きな変化がおこるはずだ。
京都で二つのベーシック・インカムを巡る議論の場が持たれる。
一つは日本を半世紀以上にわたって研究してきたロナルド・ドーアさんを囲むシ
ンポジウムである。ドーアさんは日本研究者としては非常に有名であるが、ベーシ
ック・インカムについて肯定的に論じられていることは日本では殆ど知られていな
い。このシンポジウムはドーアさんがベーシック・インカムについて日本語で語ら
れるおそらく最初のシンポジウムである。シンポジストに『日本の経済格差』など
でここ10年の格差論議の火付け役となられた経済学者の橘木俊詔さん、日本で始め
て体系的にベーシック・インカムを紹介された小沢修司さん、新進気鋭のフェミニ
ストの政治思想家の岡野八代さんをお迎えして、フロアも交えて活発な議論を行い
たいと思っている。
もう一つは、ベーシック・インカム日本ネットワークの設立大会と関連行事であ
る。2004年にできたベーシック・インカム世界ネットワークと連携しながら、来年
3月に日本にもネットワークが立ち上がる。ILOで長らくベーシック・インカムを提
唱され、ベーシック・インカム世界ネットワークの代表も勤められたガイ・スタン
ディングさん、イタリアで不安定就労者たちのメーデーなどに関わってこられた経
済学者のアンドレア・フマガッリさんなどを国外からはお迎えして、国内からは、
さまざまな現場でベーシック・インカムを主張されだした方たちを結集して開かれ
る。
いずれも詳細は下記の情報をご参照下さい。
<山森亮(やまもりとおる)氏 プロフィール>
同志社大学経済学部教員。専攻は社会政策。
『ベーシック・インカム入門』の著者。ベーシック・インカムについては国際学術
誌Basic Income Studiesの編集委員を務めた他、日本では雑誌『現代思想』『VOL』
『経済セミナー』などに寄稿。
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京都で開催されるベーシック・インカムのイベント
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ベーシック・インカム日本ネットワーク設立前夜祭、
設立記念国際シンポジウム、設立大会
日時:2010年3月26日(金)-27日(土)(入場無料・申込不要)
場所:同志社大学今出川キャンパス
詳細は下記にて更新予定
http://tyamamor.doshisha.ac.jp/
by halunet
| 2009-11-01 01:01
| ベーシックインカム