2009年 05月 28日
あまりに愚かで危険な提言 |
久松重光
5月24日の河北新報に自民党国防部会の防衛政策検討小委員会がまとめた「防衛計画の大綱」のポイントが、紹介されました。恐ろしく荒唐無稽で、無責任で、攻撃性まるだしの愚かなものです。ある意味でイスラエル政府と日本政府は、紛争を武力で解決できると信じ、生存を望み自滅的選択をするという点では、似たようなところがあります。早いところ政権交代を実現し、自民党を下野させなければなりません。
自民党国防部会小委員会の提言案ポイントは次の通り。
1、専守防衛の範囲で座して死を待たない防衛政策として敵基
地攻撃能力が必要。情報収集衛星や通信衛星、巡航ミサイルな
どを有機的に組み合わせることで実現可能。
2、積極的に宇宙を利用し早期警戒衛星、情報収集衛星を研究
、開発。イージス艦の弾道ミサイル対処能力の強化、地対空誘
導弾パトリオット(PAC3)の導入促進。
3、自衛隊の位置付けの明確化、軍事裁判所設置などの早急な
憲法改正が必要。
4、自衛隊出身の首相秘書官配置など首相補佐機能を強化。
5、武器輸出3原則を見直し。武器関連技術の輸出禁止先はテ
ロ支援国家、国連決議対象国、紛争当事国などとする。
以下、孫崎享氏の「日米同盟の正体」を援用して、この提案の愚かしさを明らかにしてみます。3,4,5は、1,2を可能にするために、日本を軍事国家するための法整備とシビリアンコントロールの撤廃、そして軍需産業を活性化させるための日本が誇る武器輸出3原則の見直しという許しがたいものですが、その1、敵基地攻撃論=先制攻撃論、2、ミサイル防衛論に関して、孫崎亨氏は、その愚を完膚なきまでに論駁しています。
北朝鮮の核実験が報じられていますが、アメリカから何十年も核の脅しを受けてきて、ほぼ無防備なイラクをアメリカが攻撃したのを目の当たりにした北朝鮮やイランが、安全保障の核心は、核兵器にあると考え、最終的な安全保障として、核保有を考えるのは、当然で驚くには当たらない、と思います。
また孫崎氏によれば、米国は、日本の核保有を懸念し、日米間の安全保障取引で、日本に攻撃能力を発展させないようにしてきた。米軍基地は、日本を無力化させる目的を持っていた、という。「防衛計画の大綱」が書かれたのは、北朝鮮の核実験の前ですから、この1,2の延長線上には、日本の核保有の論議が出てくるのは必定のように思えます。そして日本の核保有を決して米国は許さないでしょうし、では米国が日本の安全を保障するかといえば、それも確実ではないでしょう。
ところで1に関してですが、孫崎氏によれば、「敵基地攻撃」とは、基本的に先制攻撃であり、先制攻撃された国は、総力をあげて反撃してくるから、先制攻撃よって相手国の90%程度の攻撃能力を破壊しなければならない。しかしこれは実現不可能である、といいます。それに北朝鮮が、核保有したとすれば、最終的に核戦争を覚悟しなければならないでしょう。自民党の議員たちは、ゲームでもやるように戦争のことを考えているのでしょうか?
2のミサイル防衛に関してですが、これも荒唐無稽な悪しき幻想です。ミサイルを300発を保有していると言われている北朝鮮です。そのひとつでも、原発に当たれば、終わりです。それに孫崎氏によれば、日本は、相手がミサイルを打って数分で対応しなければならない。しかも打ち落とせる可能性があるのは、ミサイルが最高速度に達していない最初の2分間であり、まだ相手国の領土にいる間である、といいいます。さらに相手が、核攻撃を行うときには、ミサイル、航空機等のあらゆる手段を使って、攻撃をかけてくる。またミサイルは、おとり弾やレーダー探知妨害用金属片、レーダー撹乱とあらゆる対抗手段を駆使するだろうし、ミサイル防衛システムが、巡航ミサイル、爆撃機による攻撃に対して実質的に無力であることを認識すべきだ、といいます。日本の安全保障というシビアな現実を見据えてきた専門家が、1,2とも無効である、といっているのです。そしてその抑止は、非軍事的な分野にあるといいます。戦後日本は、国家の行き方として新しいモデルを構築した。そうした日本独自の道を再評価すべきと力説しています。
こうしてみると、自民党案がいかに無知で危険なものであるかが、分かります。絶対に日本を軍事国家にしてはなりません。どうにかして自民党を下野させなければならない、と思います。
5月24日の河北新報に自民党国防部会の防衛政策検討小委員会がまとめた「防衛計画の大綱」のポイントが、紹介されました。恐ろしく荒唐無稽で、無責任で、攻撃性まるだしの愚かなものです。ある意味でイスラエル政府と日本政府は、紛争を武力で解決できると信じ、生存を望み自滅的選択をするという点では、似たようなところがあります。早いところ政権交代を実現し、自民党を下野させなければなりません。
自民党国防部会小委員会の提言案ポイントは次の通り。
1、専守防衛の範囲で座して死を待たない防衛政策として敵基
地攻撃能力が必要。情報収集衛星や通信衛星、巡航ミサイルな
どを有機的に組み合わせることで実現可能。
2、積極的に宇宙を利用し早期警戒衛星、情報収集衛星を研究
、開発。イージス艦の弾道ミサイル対処能力の強化、地対空誘
導弾パトリオット(PAC3)の導入促進。
3、自衛隊の位置付けの明確化、軍事裁判所設置などの早急な
憲法改正が必要。
4、自衛隊出身の首相秘書官配置など首相補佐機能を強化。
5、武器輸出3原則を見直し。武器関連技術の輸出禁止先はテ
ロ支援国家、国連決議対象国、紛争当事国などとする。
以下、孫崎享氏の「日米同盟の正体」を援用して、この提案の愚かしさを明らかにしてみます。3,4,5は、1,2を可能にするために、日本を軍事国家するための法整備とシビリアンコントロールの撤廃、そして軍需産業を活性化させるための日本が誇る武器輸出3原則の見直しという許しがたいものですが、その1、敵基地攻撃論=先制攻撃論、2、ミサイル防衛論に関して、孫崎亨氏は、その愚を完膚なきまでに論駁しています。
北朝鮮の核実験が報じられていますが、アメリカから何十年も核の脅しを受けてきて、ほぼ無防備なイラクをアメリカが攻撃したのを目の当たりにした北朝鮮やイランが、安全保障の核心は、核兵器にあると考え、最終的な安全保障として、核保有を考えるのは、当然で驚くには当たらない、と思います。
また孫崎氏によれば、米国は、日本の核保有を懸念し、日米間の安全保障取引で、日本に攻撃能力を発展させないようにしてきた。米軍基地は、日本を無力化させる目的を持っていた、という。「防衛計画の大綱」が書かれたのは、北朝鮮の核実験の前ですから、この1,2の延長線上には、日本の核保有の論議が出てくるのは必定のように思えます。そして日本の核保有を決して米国は許さないでしょうし、では米国が日本の安全を保障するかといえば、それも確実ではないでしょう。
ところで1に関してですが、孫崎氏によれば、「敵基地攻撃」とは、基本的に先制攻撃であり、先制攻撃された国は、総力をあげて反撃してくるから、先制攻撃よって相手国の90%程度の攻撃能力を破壊しなければならない。しかしこれは実現不可能である、といいます。それに北朝鮮が、核保有したとすれば、最終的に核戦争を覚悟しなければならないでしょう。自民党の議員たちは、ゲームでもやるように戦争のことを考えているのでしょうか?
2のミサイル防衛に関してですが、これも荒唐無稽な悪しき幻想です。ミサイルを300発を保有していると言われている北朝鮮です。そのひとつでも、原発に当たれば、終わりです。それに孫崎氏によれば、日本は、相手がミサイルを打って数分で対応しなければならない。しかも打ち落とせる可能性があるのは、ミサイルが最高速度に達していない最初の2分間であり、まだ相手国の領土にいる間である、といいいます。さらに相手が、核攻撃を行うときには、ミサイル、航空機等のあらゆる手段を使って、攻撃をかけてくる。またミサイルは、おとり弾やレーダー探知妨害用金属片、レーダー撹乱とあらゆる対抗手段を駆使するだろうし、ミサイル防衛システムが、巡航ミサイル、爆撃機による攻撃に対して実質的に無力であることを認識すべきだ、といいます。日本の安全保障というシビアな現実を見据えてきた専門家が、1,2とも無効である、といっているのです。そしてその抑止は、非軍事的な分野にあるといいます。戦後日本は、国家の行き方として新しいモデルを構築した。そうした日本独自の道を再評価すべきと力説しています。
こうしてみると、自民党案がいかに無知で危険なものであるかが、分かります。絶対に日本を軍事国家にしてはなりません。どうにかして自民党を下野させなければならない、と思います。
by halunet
| 2009-05-28 05:16
| 安全保障