2009年 05月 17日
イスラエル/パレスチナの和平が進展しない本当の理由 |
久松重光
ガザに住み、イスラエルによるガザ攻撃の様子をレポートし続けたアミラ・ハスというイスラエルの有名な女性ジャーナリストがいます。彼女はハアレツ紙に、イスラエルが平和を望んでいない理由を分析した記事を書いています。それを読むと、イスラエルもアメリカと同じような社会構造になっていることが分かります。またハスは、水資源不足の問題や入植地の環境悪化の問題を、イスラエルが平和を望まない理由としてあげています。そのハスがこの記事を書いた翌日、イスラエル警察に逮捕されたという記事が、ハアレツ紙に載りました。その2つの記事を紹介します。
<イスラエルーパレスチナの和平が進展しない根本的な理由を分析する、アミラ・ハスの舌鋒は、相変わらず鋭い>
レベッカ・ヴィルコマーソン
イスラエルは、平和は採算の合わないことを知っている。
ハアレツ紙 2009年 5月11日
1993年以来の歴代のイスラエル政府は、彼らが行っていること、つまりパレスチナ人と和平を結ぶのをぜんぜん急いでいないということを確実に知っていたに違いない。イスラエル社会の代理人として、歴代の政府は、平和は、国益に多大な損害を引き起こすと理解していた。
<経済的損害>
セキュリティー産業は、重要な輸出部門である。ガザとヨルダン川西岸で毎日テストされている兵器や爆弾 そしてその改良といったセキュリティー産業は、重要な輸出部門である。 決して本気で終える気のなかった、オスロ・プロセスという交渉によって、イスラエルは、(非占領民の福祉を義務ずけられた)占領権力としての地位を払いのけることができ、パレスチナの領土を独立した存在として扱うことができるようになった。つまりそうでなければ、イスラエル随一の兵器や爆弾を使用することは、1967年後にパレスチナ人に使えるはすはなかった。入植地を保護することは、フェンス、道路のブロック、電子監視カメラやロボットといった絶えざるセキュリティー、監視装置や抑止装備の発展を要求する。
これらは、先進国のセキュリティーの最先端であって、銀行や会社、また暴動が抑止されねばならないスラム街や異民族居留地に隣合わせた贅沢な隣人に仕えている。セキュリティーにおけるイスラエルの集団としての創造性は、ほとんどのイスラエル人と敵と定義された人々との間の絶えざ
る摩擦状態によって、発達が促進される。弱火、ときには強火での戦闘状態は、ランボーのような兵士、コンピュータの専門家、有能な技量を持った人々、発明家といった多様なイスラエル人の気質を団結させる。平和の下では、これらが出会うチャンスは大幅に減るであろう。
<職歴の損害>
占領を維持と平和でない状態は、何十万ものイスラエル人を雇用する。約70000人が、セキュリティー産業で働いている。毎年何万人もの人が、特別な技術や望ましい副次的技術を身につけて軍務を終了する。何千もの人にとって、それは、プロの兵士、シン・ベット(イスラエルの警備機関)の諜報員、海外のコンサルタント、傭兵、武器商人といった、彼らの本業となる。したがって平和は、その職歴そして政府に主に影響を及ぼすことになるイスラエルの重要で誉れ高い階層の職業的未来を危険に晒す。
<生活の質への損害>
和平合意は、海水の脱塩化と節水技術の有無にかかわらず、ユダヤ人とパレスチナ人の間での(川から海にいたるまで)国中での水資源の公平な分配を要求する。今でさえイスラエルにとって、旱魃のため節水に慣れることは難しい。分配を平等化したら、水消費における外傷がどんなに精神的な障害になるかを推測するのは、難しくない。
<福祉への損害>
過去30年が示しているように、入植地は、福祉国家協定として栄えてきた。それらは、普通の人に、1967年6月4日の境界内では、イスラエル統治下においては、彼らの給料では許されないだろうもの、安い土地、大きな家、様々な便益、助成金、広く開放的な空間、景色、優れた道路網、質の高い教育、を提供した。そこに移住しなかったイスラエルのユダヤ人にとってさえ、入植地は、社会的・経済的向上のための選択肢として彼らの地平線を照らしている。良く知られていない状況であるが、この選択肢は、平和時の改良の漠然とした約束よりも現実的なものである。
平和はまた、パレスチナーイスラエル人への土地の分配、開発資源、教育、保険雇用、(結婚や公民権のような)市民の権利を差別することに対する安全保障上の口実を、完全に抹消しないまでも、弱めてしまうだろう。民族的差別に依拠するシステム下での特権に慣れてしまった人々は、差別の撤廃を、福祉を脅かすものと見ている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハアレツ紙は、ジャーナリスト、アミラ・ハスの投稿を、ほんの少し前に掲載したばかりであるが、今日(火曜日)イスラエル警察による彼女の逮捕のニュースを報じた。これは、今日のイスラエルにおける異議申し立ての声をますます暴力的に弾圧している、多くの事例ひとつである。それはまた、今年の初頭に行われたガザ地区攻撃の現実についての詳細で正確な情報を封じ込めるためにイスラエルが行っている企ての一部である。
レザ・マダーリ
2009年5月12日
ガザを離れると同時に逮捕されたハアレツ紙のレポーター、アミラ・ハス
ハアレツ紙配信
ハアレツの通信員、アミラ・ハスは、ガザ地区に住みつき、ここ数ヶ月以上そこからレポートしてきたが、火曜日 彼女がガザ地区を出たところで、イスラエル警察は、彼女を逮捕した。
ハスは、国境線を出た後すぐに、敵国での居住を禁じている法律に違反しているとして、尋問のために逮捕され警察に拘留されたが、彼女は、今後30日間ガザ地区に入らないことを約束させられ、保釈された。
2006年、パレスチナの兵士の国境を越えた急襲のおりのIDFの兵士の拉致の後、イスラエル国防軍(IDF)が、入国禁止令を公布して以来、ハスは、この2年間で、ガザ地区に入った最初のイスラエルのジャーナリストである。
昨年12月ハスは、ヨーロッパの平和活動家たちによって運営されている船に乗ってガザ地区に入った後、イスラエルに入ろうとしたところ、エレッツの検問所で兵士に逮捕されている。彼女が、ガザに居住する許可証を持っていなかったことが分かり、兵士たちは、彼女をズデロットの警察署まで移送した。
尋問を受けて彼女は、自分は仕事でやっているのだから、誰も彼女がガザ地区に入ることを制止しなかった、と指摘した。それからハスは、拘束を解かれたが、ハマニ氏は、彼女の事件は、裁判所に送られるであろうと語った。
前最高裁判事で、イスラエルの新聞評議会議長のダリア・ドルナー女史は、ジャーナリストであっても法の対象になりうる。評議会は、法を破ったレポーターを守ることはできない。そのかわり地方のジャーナリストは、軍規に反対する請願を、高等法院に出すべきである、と彼女は語った。
by halunet
| 2009-05-17 10:59
| パレスチナの平和